第6章 BLESSED RAIN
立ち上がり、私から顔を逸らしたまま一織さんがジャケットや鞄を持って歩き出す。
大「着替えて来ますって···イチ、お前の部屋はコッチだろ?そっちは逆方向だっつーの」
あ···言われてみれば、そっちは逆方向···
一「う、うるさい人達ですね。ほっといて下さい!」
吐き捨てるかのように言って向きを変え、一織さんがスタスタと行って自室へと入ってしまう。
普段ではありえないドアの閉まり方に、ツンと胸が痛んだ。
ナ「どうかしましたか、マリー?そんな悲しそうな顔をして」
『ナギさん···いえ、ただちょっと···やっぱり一織さんは私のこと、あんまりよく思ってないんだな、って』
ナ「ソレはなぜデスカ?」
『だって私って、鈍臭いし、モタモタしてるし、みんなに迷惑ばっかりかけてるし、今だって一織さんを怒らせてしまったし···』
だからきっと、あんな風に部屋に入ってしまったんだと、思うし。
三「心配すんなって、一織はあれで通常運転だ」
大「そうそう、イチはツンデレだからな。ミツの言う通り、あれがイチの通常運転」
『そうでしょうか···だって、普段から一織さんは私に素っ気なかったり、ちょっとした事で怒ったりとかしますし···だから、嫌い···なのかな?とか』
三「平気だって。一織は好きか嫌いかで言えば、愛聖の事は好きだと思うぞ?それは周りが見ててもバレバレな位な。それに、愛聖も陸もマネージャーも、一織からしたらしこたま構いたくなるタイプだから。血縁者のオレが言うんだから間違いない!だから気にすんなって」
な?と言いながら、三月さんがわしゃわしゃと私の頭を撫でる。
『でも、やっぱり一織さんには後でちゃんと謝る事にします。もしかしたら言わないだけで、どこか痛かったかも知れないですし』
三「そっか?平気っぽかったけど?でもまぁ、愛聖がそう言うなら、生粋の兄貴のオレがいい事を教えてやろう。一織の機嫌がよくなる···魔法」
『魔法、ですか?私は何をすればいいんです?』
三「ふふ~ん···それはだな、道具は全て···ナギの部屋にある」
三月さんの言葉に、そこにいたみんながナギさんを見た。
ナ「ワタシの部屋に??」
三「あぁ、あるぜ?じゃ、他のみんなはちょっと待っててくれ。万理さんもな」