第6章 BLESSED RAIN
一織さんが一段上がってくる度に伝わる振動に息を止めていれば、意図も簡単にすぐ近くまで来てしまった。
一「さ、ここまで来たら腹を括る事をお勧めします。私に捕まって下さい」
言われるままに片手をそっと伸ばせば、どうしても下が見えてしまって手を引っ込める。
一「怖いなら下を見ない方がいいですよ。そうですね···目を閉じるか、逆に天井でも見てて下さい」
『···分かった』
とにかく下に降りなければ、どうにもならないのは分かってるから一織さんに指示されるままに、その体に腕を伸ばした。
半ばしがみつく様に体をくっつければ、一織さんがフッ···と小さく笑った気がした。
私より、少しだけ年下のはずなのに···
どうして一織さんは、こうも落ち着いてるんだろう。
なんか···ズルい。
チラッとそんな事を考えながら一織さんの顔を見ていると、不意に私を見た一織さんと視線があってしまう。
一「私の顔に何かついているのですか?」
『あ···ごめんなさい。じゃあ、見ないようにするね』
見ないようにするとは言っても、どこを見てればいいのか戸惑い、それならいっそ目を閉じてしまえば何も見えなくなるからと両目を閉じた。
下の方で四葉さんが何かを呟き、それに対して一織さんが少し動揺しながら返して、三月さんが宥めるように間に入った。
一段ずつ降りる度にミシッと音が鳴り、その度にビクビクする私を、一織さんが一瞬キュッと抱き締めてくれる。
環「おー···いおりん、あと少しだぞ」
三「気をつけろよ一織?」
一「分かってます。佐伯さん、あと二段です」
あと二段···やっと、怖さから解放される。
そう、気が緩んだ瞬間···
万「こんにちはー、大神です。って、みんなで何してるの?」
万理の声に驚いて思わず一織さんの体から手を離してしまった。
ガタンっと大きな音をさせながら、脚立ごと体が傾いて行く。
環「アブねぇ!」
三「一織!」
万「おっと?!」
予想できる衝撃に備えて、ギュッと目を閉じて覚悟を決める。
けど、あれ···痛く、ない?
痛くは、ないけど···なんか、違和感が···?
環「いおりんが、マリーと」
三「ウソだろ、おい」
2人の言葉に恐る恐る目を開ければ···至近距離に一織さんの睫毛があって···
···えぇっ?!