第6章 BLESSED RAIN
···とは、思ったものの。
あぁ、もう···私のバカ!!!!
スマホは部屋に置いてきたんじゃん!!
今更遅いけど、どうしてさっき大事にスマホを部屋になんて置いてきちゃったんだろう、私!!
寮に残ってる誰かを呼ぶにしても、レッスン場は地下にある。
ナギさんの部屋からは、ここまでテレビの音が聞こえて来てるから、私が叫んだところで多分···声は届かない。
三月さんは買い物に言ってからしばらく経つけど、あと5分で帰るような保証もない。
一織さんや四葉さんが学校から帰ってくれば···いやいやいや。
待って、落ち着け私。
一織さんにこんな姿を見つかってしまったら、絶対にかなりの高確率で···呆れられるか、怒られる。
高いところが怖いのを自覚していてなにやってるんですか?···とか。
あなたバカなんですか?···とか。
···ありえる。
四葉さんなら、まだ···笑いながら、マリーなにしてんだよ~とか言ってくれそうだけど。
一織さん、怒らせると怖いんだもん。
私なんて、しょっちゅうなにかとやらかしてるから。
小言やお説教をされる事が七瀬さんや紡ちゃんと同じレベルで多いし。
きっと私みたいな感じの人間は、嫌いなんだろうな···
鈍臭いし?
ボーッとしてるし?
意外なところでのんびりしてるし?
空気読めないし?
なんか、自分で言ってて悲しくなって来たかも。
こういう時は···
『佐伯 愛聖、顔を上げてしっかり前を見ろ!』
怖くて効果でないよ···
ため息を吐きながら俯けば、ブラリと宙に浮いた自分の足先が目に入ってしまう。
ヤバイ···怖すぎて、吐きそう。
慌てて目を閉じてみるも、見てしまった現実はそう簡単には消えてはくれず途方に暮れる。
むしろ、この状況でずっと目を閉じている方が余計に怖い。
でも、目を開けてずっと助けを待ってるのも怖い。
誰か···誰でもいいから早く来て!!
そう懇願した瞬間、ガチャリと音をさせて玄関のドアが開いた。
一「···戻りました」
環「ただいまぁ。って、なにやってんのマリー?」
一織さんと四葉さん?!
神様···またも粋な計らいを、ありがとうございます!!
助かった···と思うのも束の間、一織さんは少し呆れたような顔で私を見ていた。