第6章 BLESSED RAIN
千 ー 照れなくていいのに···じゃ、またね? ー
電話越しにチュッとリップ音だけ残して通話が終わる。
···電話越しに行ってきますのキスを残すとか。
新婚さんかっ!!
スマホを握り締めたまま、心の中で盛大にツッコミを入れる。
あんな事をスムーズにする千は、知り合ったばかりの千からは想像出来ないよ。
だって最初の頃は、千はめちゃくちゃ人見知りで。
気に入らないと棘だらけの毒を吐いては人を遠ざけてて。
···あ、それは今もか。
あの頃は、その度に万理が慌てて間に入ったりしてたけど。
でも今は、そんなブラック千が現れた!!になったら、万理の立ち位置には百ちゃんがいる。
だけどまぁ、千に愛してるを言われ続けると私も抗体が出来ちゃうって言うか。
千のアレは私に対しての挨拶ついでみたいな所もあるし···きっと他の人に言われても、照れちゃうとかそういうのは反応薄くなっちゃうんだろうなぁ、私。
知ってる···とか?
あ、それじゃ千だ。
でも、ほんとに私が新婚さんとかになったらどうするんだろ。
新鮮味がなくなっちゃう!とか??
う~ん···それもなぁ。
大「そんなとこでスマホ握りしめてなにしてんだ愛聖?」
『あ、二階堂さん···実はいま、あ!そうだ!二階堂さんにお願いがあるんですけど!』
大「お願い?なに?」
なんてナイスタイミングで現れてくれたんだろう!
『あの、二階堂さん?私に “ 愛してる ” って言ってみて貰えます?』
大「···は?なんで?」
『なんでって、理由はちょっと言えませんけど、言ってくれたらなぁ···とか」
通りすがりの二階堂さんを捕まえて、試しに千以外に言われたらどうなのか?って言うのを実証してみたい。
『ダメ、ですか?』
胸の前で手を合わせて、わざとらしく小首を傾げてみるも二階堂さんは怪しげに私を見るだけだった。
大「あのなぁ、そういうセリフはオレよりピッタリのヤツがいるだろ?ほら、ナギとかさ」
ナギさんじゃ、千と近い部分があるから意味なーし!
『二階堂さんがいいんです!是非とも!』
大「そう言われてもだな、お兄さんそういうの苦手なのよ」
むむむ···さすが二階堂さんは手強く、のらりくらりと交わされてしまう。
あんまりこういう手は使いたくないけど···