第6章 BLESSED RAIN
『楽!私をまっすぐ見て!』
楽の顔に両手を当てて、無理やり私の方に向ける。
そして、そのまま···何も言わずに唇を重ねた。
楽「っ!···愛聖やめろっ、て」
慌てて身を捩る楽をベッドに押し倒し、シャツの裾から手を差し入れ肌を撫で上げる。
楽「く···っ、やめろ、愛聖!」
『やめない』
力じゃ叶わないのが分かってるから、横たわる楽に跨り、ゆっくりとボタンを外して胸元を晒していく。
楽「なに、してんだよ!」
瞬間、景色が反転して立場が逆になってしまう。
でも、さっきみたいな怖さは微塵もなくて···スッと目をそらす楽を見て笑ってしまった。
楽「···なに笑ってんだ」
『別に?ね、それよりもビックリした?』
楽「それなりにな」
『私にバリバリ食べられちゃうと思った?』
楽「···ノーコメントだ」
いつまでも笑いながら言う私を見下ろして、楽は自分がイタズラされた事に気が付き眉を寄せた。
『っしょっと···はぁ、ドキドキした』
楽「お前が言うな」
起き上がってあちこちを整えながら言えば、ため息混じりに楽が私を見た。
『でも、これでおあいこだからね?だから、いつまでもウジウジするの、やめて。私が知ってる楽は、ちょっとだけ意地悪で、いつも自信満々で、威張りんぼで、抱かれたい男No.1で、えっと、それから···あ、そうそう!ちょっとだけ意地悪で』
楽「お前、意地悪を2回言ってるのはワザとか?」
寄せた眉を更に寄せる楽に、そうだっけ?と笑って見せる。
『とにかく、今みたいにウジウジ、クヨクヨ、メソメソ泣いてる楽は楽じゃないんだから、もう泣かないで?』
楽「泣いてねぇよ!」
もう、大丈夫···かな。
いつもの楽の返しに戻ってるから。
『今日の事は忘れる。私にも非があるんだし、今のでお互い様のおあいこ。分かった?約束!』
楽に小指を差し出せば、躊躇いながらも楽がそこに指を絡める。
『よしよし、お利口さん』
そっと頭を撫でると、楽は少し拗ねて子供扱いすんじゃねぇ、と横を向いた。
『じゃあ、今度はほんとに帰るね?龍を待たせてるから』
楽「愛聖···悪かったな」
横を向いたままで、楽がぽそりと呟く。
『また今度、美味しいご飯···期待しとく』
にこりとして、私はそっと部屋から出た。