第6章 BLESSED RAIN
龍から掛けられた天のカーディガンを纏い、前を合わせて、乱れ掛けた髪を簡単に纏める。
龍「立てる?」
背後にいる龍が私の両肩に手を添えて、せめて脱衣所に移動しようかと提案した。
龍「さすがにオレ達がいる場所で身支度は出来ないだろ?あそこなら鏡もあるからメイクも直せるし、愛聖が使える物は勝手に使っちゃって構わないから」
『だって、ここは楽の家なのに?』
龍「平気平気。楽はオシャレだからさ、メイク道具はないけどワックスとかスプレーとか、そういった物は売るほどあるから。ちなみにオレが泊まり込んだ時も勝手に使ってるから気にしなくていいよ」
分かった、ありがとうと言ってドアノブに手を掛けると、龍はドアに軽く手を添えてから少し躊躇いがちに私を見た。
龍「お節介な事かも知れないけど、もし···出来るなら、髪は下ろしといたままの方がいいよ」
『そう···だね。今夜はそうしておく』
きっと龍は、気付いてるんだ。
楽が付けた···シルシの事を。
龍「それからさ、支度が終わったらオレが送ってくから」
『えっ?!まだ早い時間だし電車もバスもあるから大丈···龍?』
ちょっと驚いた顔をして急にクスクスと笑い出す龍に、どうかした?と声を掛ける。
龍「いや、天の予想は大正解だなって思って」
『天が、なんて?』
龍「天から連絡貰った時に言ってたんだよ。お願い聞いてくれって。1つ目は自分を楽の家まで送って欲しい。2つ目は、そこに愛聖がいたら帰るべき所へ送り届けて欲しいって。じゃないと、公共機関で帰るとか言い出しそうだからってね。どう?大正解だろ?」
『···そうね』
言ってしまってから、その返事はまるで千みたいだと気付き···私も思わず笑ってしまう。
龍「やっと、笑ったね」
『龍?···うん···そう、だね』
笑ってしまった理由は内緒だけど、でもいま···私は少しだけ笑えてる。
龍「じゃあ、支度終わるの待ってるから。あ、無理に慌てなくていいからね?」
最後に私の頭をぽんぽんっとしてから、龍は静かにドアを閉めた。
そう言えば、龍はいつも···こんな感じだなぁ。
故郷に弟ばかり3人いるから、歳下の私はまるで妹のようだと言っては何かとこうやってぽんぽんっとして。
でもそれが、何だかいつも安心するって言うか。