第6章 BLESSED RAIN
楽「···答える必要はない」
天「じゃあ質問を変える。愛聖はなぜ、あんな姿を晒して···泣いてるの?」
オレ達からは愛聖の斜め後ろ姿しか見えてないのに、天には泣いてるのが分かるのか?
天の物言いに楽はハッとした顔を見せ、勢いよく愛聖を振り返った。
天「龍、愛聖の所に行って。それから、これを」
「えっ?あ、あぁ分かった」
天が羽織っていたカーディガンをオレに渡し、早く行けと目だけで訴えて来る。
天「楽は、そうだね···とりあえず衣服を正したら?そんないかにもって格好じゃ、まともに話なんて出来ない」
いかにもって、じゃあ楽はやっぱり?
天と楽の横をすり抜け、ソファーに佇む愛聖の元へ向かう。
天から預かったカーディガンをそっと肩に掛けてやると、愛聖は大袈裟な位に肩をビクつかせた。
「あっ、ゴメン驚かせて···オレだよ、オレ」
『···龍?』
声を掛けると愛聖は更に驚きながら思いきり振り返り、その勢いで肩に掛けた天のカーディガンが落ちてさっきよりも数段と素肌を目の当たりにした。
『あっ···』
一瞬の間を置いて愛聖が胸元を押さえてオレを見た。
「み、みみみ、見てない!見てないから!」
そりゃ、成り行きでちょっとは見ちゃったけど!
違う違う、そうじゃないだろ、オレ!
ヤバい、勝手に顔が熱くなってく···
『その顔は···見たんでしょ?』
バレてる!!
「えっと、その、ゴメン。ちょっとだけ見た···じゃなくて、見えちゃった···けど、わざとじゃないから!そこは信じて!」
『龍、慌て過ぎだから。あと、ひとつお願いがあるんだけどいい?』
「お願い?いいけど、なに?」
『さっき私···楽の顔、思い切りひっぱたいちゃって···だから、今すぐ冷やしてあげて欲しいの』
あぁ、あれは愛聖がやったのか。
···状況からして、他にいないんだけどね。
『明日は仕事があるって楽から聞いてたのに、私···切羽詰まっちゃって···つい』
「分かった。愛聖のお願い、オレがちゃんと聞いてあげるからさ。だから、とりあえず向こうの部屋に行こうか」
こんな時でも、楽の仕事の事を考えるなんて。
自分の事は後回しなんだな···何だかオレと、似てるよ。