第6章 BLESSED RAIN
百ちゃんに返事をした直後、タイミングよく戻って来た楽が盛大なため息を吐きながら私のおでこを弾く。
楽「生憎、こんなチンチクリンを襲うほど困ってないから」
うわ···なんか凄い私に対して失礼極まりない。
百「なら···いいけどさ」
百ちゃんも、酔ってるから許すけど···失礼だよ。
『はいはい、じゃあそのチンチクリンがプロレーサー並の運転であっという間にお部屋まで送りますかね』
「「 ぜひ安全運転で! 」」
ザッと顔色を変えながら声を揃えなくても、ちゃんと安全運転しますって。
『あ、そうだ。楽、今日のこの食事代だけど岡崎さんがRe:valeの経費で落とすからってお会計してくれちゃったから』
楽「なんで止めねぇんだよ!」
『止めたけど、岡崎さんがRe:valeの2人がお邪魔しちゃったし、楽にも飲ませちゃったからって···ダメだった?』
楽「いや···もういい。百さん、ご馳走になります」
百「え、あ、うん···それはいいよ、オレらも調子乗って飲ませちゃったし」
岡「あ、お待たせしました。帰りましょうか、皆さん」
会計を終えた岡崎さんが戻り、まだ何か言いたそうな百ちゃんを連れて前を歩き出した。
『私達も行こうか?大丈夫?1人で歩ける?』
楽「そこまで酔ってねぇよ、行くぞ」
お店の地下にある駐車場で百ちゃん達と別れ、それぞれ車に乗り込む。
楽がシートベルトをしたのを確認してエンジンをかけると、同時に鳴り出したカーステレオの曲に笑ってしまった。
『楽···自分で運転しながらTRIGGERの曲聞いてるの?』
楽「うっせぇな···いいだろ別に。ボイストレーニングの一貫だ」
アハハ···しっかり歌も歌っているわけね。
ハンドルを握りながら歌う楽を想像して、また吹き出した。
楽「ったく···いつまでも笑ってんじゃねぇよ」
『はいはい、どうもすみません』
楽「ナビついてんだから道分かるだろ?···ちょっと寝る。着いたら起こせ」
その言葉の後、楽はすぐにすぅすぅと寝息を立て始めた。
···思ったより、酔ってたのね。
カッコつけて平静を装ってたってことかな?
それよりも、起こせって言ってたけど···すんなり起きるかなぁ。
楽のキレイな寝顔を覗き見ながらそんな事を考え、ナビが案内する家までの道を車を走らせた。