第6章 BLESSED RAIN
千「愛聖···ホントに1人で楽くんを家まで送るの?部屋の前まで?それとも部屋の中まで?」
帰る前に手洗いに立った楽を見送って、身支度を整えながら千が私をチラリと見る。
『程よく酔ってるのに玄関先で置き去りになんて出来るわけないでしょ?ちゃんと部屋の中まで送り届けて、必要ならベッドに寝かせてから帰るよ?』
ごく当たり前の答えをすれば、千は眉を寄せて無言になってしまった。
百「マリー、おかりんにも楽の家まで車付けて貰うからさ、オレも楽を部屋まで送るよ。マリーにだけ送らせるなんて無責任だし帰り、困るだろ?」
『送った後は電車だってあるし、事務所に連絡して手が空いてる人がいたら近くまで迎えに来て貰う事も考えてるから』
百「だけどさ、その···一応、楽も男だし···酔った勢いでとか、さ?」
その可能性はゼロだとは言い切れないけど、楽は今までそんな事は一度もなかったし。
『ありがと百ちゃん。でも大丈夫、かな』
千「もし···大丈夫じゃなかったら?」
それまで無言でいた千が、小さく言いながら振り返る。
千「楽くんは···ちゃんとジェントルだって言い切れるの?」
『楽だって酔ってるけど、見境なくなんてならない···と思う』
千「はぁ···もういい、話にならない。モモ、先に出てる」
なんでそこで千が怒るの?
こういう風になった千は、もう何を話しかけても暫くは変わらない。
百「ユキの事はオレが機嫌取っとくから心配しないで。多分あれは、マリーの事が心配過ぎて楽にヤキモチ妬いてるだけだからさ」
『千のご機嫌取りはしなくていいよ。勝手に千が怒ってるんだから···楽が言ってたのも、ちょっと当たってるのかもね』
さっき楽は、千は私に対して過保護だって言ってたから。
それに楽だって飲んでるって言っても意識はあるし、運転させられないだけなんだし。
あ、私の運転で違う意味で酔ったらどうしよう。
···その時は、その時に考えるかな。
百「もし、襲われそうになったらオレにすぐ電話しな?」
電話した所で百ちゃんだって飲んでるじゃん。
でも、とりあえず返事しとかないとこの話は終わらないだろうから···
『分かった。楽に襲われそうになったら電話するよ』
楽「いったい誰が···こんなチンチクリン襲うかよ」