第6章 BLESSED RAIN
そっと顔をのぞかせてみれば、そこには女の人の後ろ姿があって。
電話中となれば前にも進めないし、ここにずっといるのも立ち聞きしてるみたいで後ろめたい。
そうユキに小声で伝えれば、ユキは別に関係ないでしょと言って前に進んでしまった。
「あ、ちょっとユキ?!」
千「愛聖?」
「えっ?」
さっきオレに急に立ち止まるなって言ったユキの背中に顔をダイブさせて止まり、ユキが漏らした名前を聞いて鼻を押さえながら顔を出す。
『あ、千···と、百ちゃん?』
ホントにマリーだ!
『どうしたの?こんな時間に珍しいね』
千「愛聖こそ、こんな密閉された場所で何してるの?誰かと密会?それとも···」
ユキの、それとも···の後に続く言葉に息を飲んで耳に神経を向ける。
『食事に誘われて、2人でご飯食べてただけだけど?』
ですよねぇ···え、ふ、2人って?!
まさか事務所の社長とかじゃないよね?!
千「食事に誘われた?こんな怪しげなところに?」
ユキ~!その怪しげな所を選んだ自分はいいの?!
『怪しげなって、そうでもないよ?静かに話せるし、落ち着いた雰囲気じゃない?私も最初は入りにくかったけど、中に入れば全然?』
千「で、誰と?」
『誰とって、普通に、』
マリーが一緒にいる相手を言おうとした時、マリーの後ろのドアが開いて···
楽「おい愛聖、電話終わったの、か···あ···え?!」
「えぇっ?!一緒にいるのって、まさか···」
『楽、だけど?』
なんで?!
なんでこんな怪しげな密室のお店にマリーと楽が2人でいるの?!
って、オレも怪しげなとか言っちゃってるけど!
楽「愛聖、いまの電話の相手って、まさか···」
『あ、それは違うよ。私もいま千達に会ってビックリしてたところだから···あ、じゃあ千も百ちゃんも、それから岡崎さんもごゆっくり』
ペコリとお辞儀をしてからマリーが楽を押し込みながら部屋の中へと入って行く。
千「待って。僕達の部屋、隣みたいなんだけど···ご一緒しても構わないよね?···楽くん?」
楽「え···あ···············はい」
なに今の凄い長い間は!
オレ達が一緒じゃダメな理由でもあるの?!