第6章 BLESSED RAIN
❁❁❁ 百side ❁❁❁
なんか、凄い秘密基地っぽくてワクワクする店だな。
入口で受付して部屋までの案内図が書かれた紙と、あとは部屋番号だけ教えられて。
身分証明をしたおかりんの後ろに立つオレ達を見ても、受付にいた店員が驚きもしなかったのは、さすが芸能人御用達の店ってとこか。
全室個室対応って、こんな感じなんだなぁ。
全然閉鎖的に感じないのは、通路が広いのとか、観葉植物がオシャレに飾られてるのとか、店内が変に間接照明とか照らされてないからだね、きっと。
芸能人とか有名人がよく来店するとかネットには書いてあったのも、なんか分かる気がする。
運が良ければ見かけられる!とかも書いてあった。
千「モモ、さっきからソワソワしすぎ。どれだけお腹空いてるの?」
不意に足を止めたユキがオレを見て小さく笑った。
「違うって。あ、腹減りは腹減りだけどさ、さっきネットで見たレビューに運が良ければ芸能人に会えるかも!とかあったから気になってさ」
千「そうね···じゃあモモの運が良ければ誰かに会えるんじゃない?」
岡「あのですね···お二人共、自分がその芸能人であるという自覚はないんですか?」
やや呆れ顔のおかりんがオレ達を見てメガネをクイッと上げる。
千「芸能人の自覚?···どこかに置き忘れた」
「オレもオレも!」
岡「···なるべく早めに探して来て下さい」
「「 は~い 」」
えへへっと笑いながらユキと返事をして、おかりんが持ってる案内図を覗き見て、あの角を曲がればオレ達の部屋じゃん!とユキを振り返る。
岡「こういった店は、一般の方も使うんですよね?どんな方達が訪れるのか、逆に気にもなりますよね」
千「そうね···例えば、表立って外では会えない恋人同士が密室で逢い引きしてるって可能性もあるんじゃない?」
逢い引きって、ユキ···時代劇じゃないんだから。
岡「なるほど···そういう使い方もあるんですねぇ。勉強になりますね」
って、おかりんも納得しないで!
というより誰かと使う予定なの?!
ふざけ合いながらも通路を進み、いざ角を曲がるところで誰かの話し声が聞こえて足を止めた。
千「モモ、急に立ち止まったら危ないから」
「だって、角の向こうに誰かいるみたいだからさ···電話中みたいだし、どうしようか」