第5章 ヒカリの中へ
どれだけ駆け回っても、どんなに目を凝らしても···母さんはいない···
『どこに行ったの?母さん···ひとりに、しないで···』
一気に押し寄せる孤独の波が私を流そうと水嵩を増していく。
不安と孤独に押し潰されそうになって···両腕で自分を抱き締めると、急に辺り一面が明るくなって···
「大丈夫です···あなたはひとりじゃありませんよ」
誰···?
どこからか聞こえてきた声に、言葉に···暖かさを感じて心が満たされて行く。
ひとりじゃない···
私はひとりじゃないんだ···よかった···と安堵の息を漏らす。
そう思うと、私の周りに色とりどりの光が降りて来て
ふわりと浮いたり、光が寄り添って来たり、飛んだり、跳ねたりしながらクルクルと周りを巡って行く。
その光たちを追いかけながら辿り着いた先には、その中のどれとも似つかない色の···ひとすじのヒカリが見えた。
『あそこに行けばいいの?』
光たちに案内されながら進めば、そこはやがてヒカリ輝く真っ白な世界へと変わって、眩しさに目を閉じた。
その眩しさが落ち着いた頃、ゆっくりと···目を開けてみれば···
『あ···れ···?』
ここ···は?
ぼんやりと目に映る、やけに距離の近い天井。
自分の物とは違う肌触りの枕に、コロンと寝返って顔を埋めてみる。
ここ···私の部屋でもベッドでもない!
どういう事?!
確か私···千の家から寮に帰って来て、それで。
リビングでみんなが集まって···映画を見ていて。
騒いで、リモコン争奪戦してて。
躓いて七瀬さんにダイブしちゃって···えっと···?
···ん?
この辺りから記憶が途切れてるような···?
って事は、ここは私以外の誰かの部屋?!
戸惑いながら体を起こし、カーテンを閉められた薄暗い部屋の中をゆっくりと見渡してみる。
誰の、部屋だろう。
余計な物は何ひとつ置いていない感じの、整頓された部屋。
壁際には、ハンガーにかけられた学校の制服。
えっ···制服?!
寮のメンバーの中で学校に通っているのは2人だけで。
四葉さんの部屋は何度か入った事があるから分かる。
···と、言うことは?
ここはやはり···一織さんの部屋という事で間違いない?!
『えぇっ?!なんで私がここに?!』