第5章 ヒカリの中へ
カーテンが閉められている向こう側は既に暗く。
私が寮に帰って来た時はまだお昼前だったのに?!
待って···ちょっと落ち着こう。
ひと息吐いて、時間を確認しようと枕の下に手を入れてスマホを探す。
···あれ?
ない。
···けど?
指先に触るふわふわとした感触の何かを引っ張り出し···思わず顔を緩ませてしまう。
『かわいい···』
手のひらサイズのそれは、全体がふわふわでモコモコの不思議な形をした小さなマスコット人形で、その手触りの良さに癒されてしまう。
でもこの部屋って、一織さんの···だよね?
不思議な気持ちで人形を見ていると、廊下から足音が聞こえて来てガチャリとドアが開けられ、人の気配がした。
一「ようやく目が覚めたようですね」
『一織さん···あの、私···』
どうしても一織さんの部屋で寝てたんでしょうか?と言おうとして口を開きかければ。
一「あっ、それは!」
部屋の明かりを付けた一織さんが私の手の中にある物を見て慌て出し、奪うように私から取り上げて隠してしまう。
『かわいい物がお好きなんですか?』
一「違います。これを触ってると癒されるとか、そんな事は思ってません。そしてこの件に関しては他言無用です」
要するに、ホントはかわいいものが···好きなのかな?
別に隠すことないのに。
四葉さんだって王様プリンの大きなぬいぐるみを部屋に置いてたりするんだし。
ナギさんだって···あ、あの部屋は特別仕様なのかもだけど。
前に見たナギさんの部屋を思い出して、その錚々たるアニメグッズの凄さに口元が緩む。
一「何を笑っているんです」
『いえ、かわいい物が好きでも別、』
一「違います」
私が言い終わる前に被せるように即答する一織さんが可笑しくて、私はまた笑った。
環「お、やっぱりマリー起きたんだ?スゲー寝てたよな」
ドアの向こうからひょっこりと部屋を覗く四葉さんが、私を見つけるとプリンを食べながら部屋の中に入って来た。
一「四葉さん。歩きながら食べるなと逢坂さんに言われませんでしたか?···ここで零したりしないでくださいよ?」
眉を寄せる一織さんに、四葉さんは王様プリンこぼすワケねぇし!と言ってドヤ顔を見せた。
一「ところで佐伯さん、いつまでそこにいるんです?」
『それは、ですね···』