第5章 ヒカリの中へ
いくつかの電車を乗り継ぎながら、ようやく寮へと戻って来た。
寮に帰る前に1度事務所に寄って、社長に挨拶をして···何事もなく無事です!と帰りの報告をした。
そして今、やっと寮の玄関を開ける。
帰りの電車は座ったら寝てしまいそうだったから、どんなにガラ空きでも立ちっ放しでいたせいもあって、気を抜いたらこの場で倒れ込んで寝てしまいそうなほど睡魔に囲まれていた。
···それにしても、妙に静かだな。
今日は確か、高校生組は開校記念日だとか言ってたからメンバー全員いるはずなんだけど?
チラリと時計を見ても、朝寝坊するに遅過ぎる時間で、さらに言えば規則正しく!をモットーにしている一織さんや、普段からちゃんとしてる逢坂さんあたりは姿を現していてもおかしくはない。
みんな、どこにいるんだろう。
閉じてしまいそうな目を軽く擦りながら廊下を歩き、リビングのドアを開けようと手を掛けると、中から人の話し声のような物が聞こえて来て。
なんだ···みんなここにいたんだ?とそっとドアを開けた。
···までは、良かったんだけど?!
ー 初めは親が勝手に決めてきた縁談なんて、嫌で嫌で···アナタに嫌われて縁談を断って貰おうとしていました。だけどいまは違う···アナタの側に、いたいんです··· ー
あれ···?
このセリフ、どこかで···?っていうより、つい数時間前に聞いた覚えが···
ー 僕だって、今更キミを離したくはない。でも、もう···長くはないと分かっていながら、将来のあるキミを縛りたくはないんだ ー
ー 私は···縛られているとは思ってません。自分の意思で、自分の気持ちに素直になって···アナタの側にいたいと思うから。だから···今宵、アナタの妻にして下さい··· ー
ー やめなさい!僕の為にそんな事をしないでくれ ー
ちょっ···と、待って?!
このセリフの後って確か!!
ー 僕はキミを置いて先に逝くのに、どうしてキミは···そんなにも、 ー
ー それでもアナタを···愛してしまったから··· ー
呆然と立ち尽くす私の目の前で、画面の中の私が···ひとすじの涙を落としながら、躊躇いながらも震える手で着ているものを1枚ずつ、ゆっくりと剥ぎ取って行く。
「「 おおっ~!! 」」