第5章 ヒカリの中へ
眠れなかった理由を話しながら、千と笑って···それで···不意に聞こえてくる、千の···言葉···
千「キッチンで、モモと···なに、してた?」
私の、聞き間違いじゃ···なくて。
自分の顔から血の気が引いていくのが分かる。
『別になにも、』
千「作業を終わらせて部屋から出ようとしたら、モモ
と愛聖がいるのが見えて。またふざけあってるのかと思って見てたら···その後···」
見られ···てた?
『別に、やましい事があるわけじゃないよ···あれはただ···』
百ちゃんが···って、ここで言うのはズルいかも知れないと思うと、その先の言葉が見つからなかった。
千「いいよ、別にそれを責めるような関係じゃない。大方、モモが頑張って愛聖の事を隠し通してたご褒美ちょうだい、とでも言ったんだろ」
···さすが千、大正解です。
とか、笑える立場じゃないことは当然で。
千「まさか、あんなシーンを目撃する事になるなんて」
まるでドラマのワンシーンのようだね···と、千は笑った。
『あれは確かに千の予想通り、百ちゃんがご褒美ちょうだいって言って。それで、何あげたらいいのか分からなくて考えてたら···百ちゃんが何貰うか考えるから、ちょっとだけ、』
千「目を閉じてて、とでも言われた?」
そう言われて、私は黙って頷いた。
千「いたずらっ子のモモがやりそうな事だ。それに引っ掛かっちゃう愛聖も、まだまだ修行が必要だね」
『修行とか言われても』
千「修行は修行、かな?生憎、愛聖の周りにはモモ以外にもたくさんのオオカミがいるからね···例えば、ほら。抱かれたい男No.1とか2とか?」
それって楽と···龍?
それはないんじゃないかなぁ···だって楽はまぁ、あんな感じだし。
龍に至っては、あのセクシーさを全面に出してるのは八乙女社長の方針だから。
千「あぁ、そうだ。そう言えばもうひとり、毒を吐く天使もいたっけ」
『···天のこと?』
千「あれ?僕は毒を吐く天使としか、言ってないけど?」
『千のそういう所、ズルい。それに、千はそのオオカミさん達の中には入ってないんだね』
からかわれた事のお返しに、バルコニーの柵に背中を預けながら笑って見せる。
千「どうかな···案外、誰よりも野心的でオオカミかもよ?」