第5章 ヒカリの中へ
❁❁❁ 千side ❁❁❁
決して大きくはないライヴハウスのステージに、僕は立ってる。
何気なく客席に目をやれば、そこにはモモがいて。
どうしてモモがそこに?
どうして僕は、ここに···?
客席にいるモモに、早くここに来い···そう言いかけて、僕の隣に誰かが立つ気配で視線を移す。
···万?
万「ユキ、待たせてゴメン。ちょっと岡崎さんと話をしてたから」
「あぁ、あのちんちくりんと」
さっき突然現れて、興奮気味に僕達に声を掛けてきた。
万「またそんなことを言って···ありがたいだろ?芸能事務所って事をチラつかせずに、ちゃんとチケットを買って見に来てくれてるんだから」
「···そうね」
人見知りな僕の代わりに、何かあればいつも前に出てくれる万に素っ気なく言って返す。
万「仕事で最後まで居られないって言ってたけど、1人でもお客さんが多い方が、俺達のステップアップの糧になるんだから感謝しないとな」
感謝···
「万。あの曲、最初に歌おう」
万「岡崎さんのため?」
「そうだよ。Re:valeのファンなら1番聴きたいはずだろ。それに、アイツも」
フイッと顔だけ向けてやれば、万も同じ方向に顔を向けて小さく微笑みながら手を振れば、嬉しそうな顔をして両手をブンブンと振り返している。
万「彼にも感謝しないとな?俺達の歌が好きだって言ってくれて、最近は準備や片付けまで率先して手伝ってくれてる。千もそういう所、見習えよ?」
「···考えとく」
僕がそう言うと、万はいつものように···はいはい、と小さく笑って、それから···マイクに手を掛けた。
万「こんばんは、Re:valeです!今日も来てくれてありがとう!」
万が挨拶がわりにそう言えば、途端に客席の温度が上がって行く。
万「今日の1曲目は···」
あぁ···そうだ···万が新しい曲を歌う事を告げて。
Re:valeの新曲を心待ちにしていたみんなが歓声を上げて。
万「それじゃあ、聴いて下さい···曲名は···」
〖 未完成な僕ら 〗
少しレトロなイントロが流れ出し、僕が歌いだして···それから万のパートに変わって。
その後···万と一緒にAメロのサビを歌っている所で
···
···あの事故は起きた。