第5章 ヒカリの中へ
百「あれ、ユキは?」
キッチンで洗い物をしていると、お風呂から出た来た百ちゃんが濡れ髪のまま部屋を見渡した。
『千なら、どうしても終わらせたい仕事があるって、お仕事部屋に行ったよ?でも、すぐ終わるからって言ってた。それより百ちゃん、風邪ひくからちゃんと髪乾かして?』
百「せっかくマリーがいるってのに仕事とか···あ、あれの事かな···」
独り言を言いながら冷蔵庫を開ける百ちゃんを見て、水気が切れたコップを手渡してあげる。
百「サンキュ!···それよかさ、マリーもユキがいない内にお風呂入って来ちゃえば?じゃないと、一緒に入るとか言い出しそうだから」
『それはないと思うよ?だって1番先に千が入ったんだから』
百「ってかさ、今更だけど···ホントにお風呂の順番、最後で良かったの?」
コップに注いだミネラルウォーターを飲み干して、フゥ···息を吐きながら百ちゃんがまたコップにそれを注ぐ。
『その方が慣れてるから。寮だと私だけ女だし、それなら誰かが間違えて入って来ちゃうって事もないし、出際にお掃除出来るし便利なの』
百「えっ?!マリーだけ女って···えっ?!オレ聞いてないけど?!」
あ···しまった。
最後の1枚を洗い終えて水を止めながら、今のは失敗したなぁ···と自分に苦笑する。
気を付けないと、もし万理の事を口走ったりしたら···万理との約束が守れなくなっちゃう。
こういう時は···
『お···お口にチャック!』
百「えぇっ?!それズルいぞマリー!」
『さてと。洗い物終わったし、お風呂入って来るね!···わっ!』
通せんぼをする百ちゃんを交わしながら横をすり抜けようとして、キッチンマットに躓いてしまう。
百「危なっ!···百ちゃんナイスキャッチ!」
『ごめん百ちゃん。私そそっかしくて』
百ちゃんの胸にぶつけた鼻を押さえながら言えば、ホントホント!と笑ってくれた。
『じゃ、お風呂行ってくるから』
百「あ、待ってマリー」
『百ちゃん、苦しいって···』
ぎゅうっと抱きしめられて身動きが取れない体を捩る。
百「ぶっちゃけ、今回の事があって肩の荷が降りた気がする。だけど本当はもう少し、秘密を共有したかった自分もいて···変な感じでさ」
百ちゃん···?