第5章 ヒカリの中へ
玄関先で2人に盛大に抱きしめられ尽くしたあと、千に部屋へと招かれた。
久し振りの千の言部屋は、最後に来た時となにも変わってなくて。
部屋のあちこちに置かれた観葉植物さえ、色褪せることなく癒しの空間を作り出していた。
テーブルの上には千が作ったと思われる、というか、百ちゃんがここまで作れないのは分かってるから···だけど。
私が好きなものや、前に千が作ってくれて私が美味しいと言った数々の料理が所狭しと並べられていた。
千「お腹空かせて来るだろうと思ったから」
そう言って静かに微笑む千に、こんなにたくさん食べられないよ···なんて答えながらも勧められるままにイスに腰を下ろした。
千「どれから食べたい?ほら愛聖、取り皿はこれね?」
『どれもみんな美味しそうだけど、その前に千と百ちゃんに···聞いて欲しい話があります』
千「なに?急に畏まって。もしかして着替えでも忘れたの?それなら、愛聖の着替えはいくつかあるから心配しないで?替えの下着もちゃんと、前に愛聖がここに寝泊まりした時のがあるから」
···あるんだ。
じゃなくて!
ふるふると軽く振って、小さくひとつ息を吐いた。
『聞いて欲しい話っていうのはね···』
それから暫くは、千も、先に少しだけ話しておいた百ちゃんも、私の話を黙って聞いてくれていた。
千「小鳥遊プロダクションの?」
『うん、そう···』
生きていても仕方ない、この人に溢れる街なら私がひとり消えても誰も気付かない···と思いながら街を徘徊していた事や、そんな時に小鳥遊社長に拾われた事を話した。
万理の事は伏せて。
千「じゃあ、今まで所属してたところは?」
『小鳥遊社長と一緒に挨拶に行って、正式に···と言っても、その前に私は解雇されてるけど。でも小鳥遊社長が話をしに行くって聞いて、私も八乙女社長にちゃんと挨拶したかったから連れて行って貰ったの』
千「そうね···その方がちゃんとしてる。けど、小鳥遊プロダクションと言えば、これから売り出そうとしてるグループがあるんじゃない?まだまだ荒削りの、7人の小人たち」
『いるよ。だから私は、そこでは研究生としてみんなの後輩って立場でいる』
千「研究生で後輩?!」
カップに口を付けかけた千が、その手を止めて声をあげた。