第5章 ヒカリの中へ
それからだったなぁ···マリーがバンさんの名前をあんまり口にしなくなったのはさ。
···ユキもだけど。
マリーと別れてからすぐにユキの所に向かって、ユキとも仲直りして。
その後少ししてからマリーも忙しくなって、連絡を取り合ったり、同じ局で仕事の時は楽屋に行き来してはいたけど、3人で一緒に過ごす時間もなくなって。
もちろん、一緒に映画に撮ってる時はお泊まり会したり、ご飯食べに行ったりはしてたけど。
段々と見かけなくなるようになってから、今回の事が起きて。
ユキもそうだけど、オレだって死ぬほど心配したし。
あの日、偶然マリーに会うまでは···だけど。
いや、会ってからも聞けない事がたくさんあったけど!
あの時マリーが持ってた買い物袋の中に、グリーンとピンクの色違いの歯ブラシ。
缶ビールが2本···それから、柔軟剤の詰め替えらしき商品···
どれもこれも生活感のある物ばっかでさ。
やっぱ···聞けないよな。
誰かと一緒に···住んでるのか?なんて。
約束なんて、するんじゃなかった···かな?
······。
違う違う、違ーう!!
オレはいつだってマリーの味方だし、そこは男らしく約束は守る!
今日もしユキが怒り出しても、絶対守る!
だって前にユキにマリーを見つけたらどうするか聞いた時、言ってたじゃん?
とりあえず、思いっきりひっぱたく!って。
あの時だってユキのビンタは痛かったのに、思いっきりとか絶対ダメでしょ!!
痛かったのを思い出すように自分の頬に手を当てて擦る。
千「モモ?さっきから黙って見てれば···歯でも痛いの?」
お皿を出しに来たユキがオレの顔を覗いて、小首を傾げる。
「違うって···ちょっと痛いこと思い出しちゃったの!」
笑いながらそう言えば、ユキは変なモモ···と言ってまたキッチンへと入った。
あとどれ位で···来るかな?
もし、近くまで来てたら迎えに行こうかな?
なんて考えながら、マリーにラビチャでメッセージ送ろうかとスマホをポケットから出す。
だってもう、ユキにはバレてるからこっそり···なんてしなくていいし。
でもまだ、大っぴらには···出来ないけどね。
そんな事を考えながら、ひと文字ずつゆっくりとメッセージを打ち始めた。