第5章 ヒカリの中へ
千「万の事は今は関係ない!」
『関係なくなんかないよ!千が先に万理の名前を言ったんじゃん!千だって今でも万理がいたらとか、万理だったらとか思ってるでしょ!』
きっかけは、オレとユキが曲の事で意見の食い違いからのちょっとした言い合いからで。
その時にユキが、つい漏らしたひと言。
ー 万だったら、もっと分かってくれるのに··· ー
その言葉にマリーが怒り出して言い合いになって。
「ユキもマリーも落ち着いて!オレは別に気にしてないからさ?ね?!」
千「モモには関係ない、黙ってて」
『関係なくない!百瀬くんがいつもどんなに頑張ってるか千は分かってない!』
千「僕の気持ち···何にも分からないくせに割り込んでくるな!」
『そんなの分からないよ!分からないけど、いまのはユキが悪い!ユキは見えてる?ちゃんと百瀬くんの事、見えてるの?···百瀬くんは万理の代わりなんかじゃない!万理だってそんなのきっと望んでない!何にも分かってないのは千だよ!!』
マリー···
マリーが、そんな風に思ってた事にジーンとしてたら、ユキが言い返せなくて···手を上げるのが見えて。
「ユキ!!」
ユキの名前を叫びながら体が勝手に動いて、乾いた音と同時に痛みが走る。
「痛ってぇ···」
『百瀬くん?!』
ジンジンと脈を打つ場所に手を当てて、こんなのがマリーにヒットしなくて良かったと小さく息を吐いた。
「ユキ···いつもみたいに冷静になってよ。女の子に···マリーに手を上げるなんてユキらしくない」
千「モモ···そこを退いて」
「退かない!」
千「モモ!」
詰め寄るユキと距離を取りながらマリーを背中に隠してジッとユキを見上げる。
「ユキにバンさんの代わりでもいいって言ったのはオレだし、そこは何を言われても平気。だけど、自分のイライラをマリーにぶつけるのは違う···もう、分かってるだろうけど」
その顔を見ればすぐに分かる。
ユキの、顔を見れば···
千「···帰る」
『千!』
誰とも目を合わせずに部屋を出ていくユキを追いかけるように立ち上がるマリーの腕を引いて、止める。
「ユキは大丈夫だよ」
帰るって言ったけど、多分···