第5章 ヒカリの中へ
びっ···くり、した···
社長に許可を得て、事情を知っている百ちゃんには先に説明してもいいよと言われたから電話したんだけど。
まさか、その電話に···千が出るのは予想外だった。
Re:valeとして2人で仕事してるんだから、一緒にいるかも知れないって事を考えてなかった私が悪いとは思うけど。
でも···
思わず切ってしまったスマホを持つ手が、まだ微かに震えてる。
千···怒ってるよね、絶対。
···怒ってない訳がない、か。
ずっと連絡を受け付けてなかったのは、私。
連絡をしなかったのも、私。
そして千が百ちゃんの電話に出たって言う事は、きっと今頃···百ちゃんは千に問い詰められてるかも知れない。
百ちゃんは私との約束で、絶対にあの時に会った事からの流れは言わないと思う。
どんな事があっても約束は守る···そう言ってたから。
だとしたら、やっぱり百ちゃんは今ピンチな状態だよね?!
思い詰めた千は、何を言い出して百ちゃんに詰め寄るか分からないし。
···思い詰めた、千。
···何を言い出すか分からない、千。
Re:valeを辞める···とか言い出したら、絶対百ちゃん超絶ピンチ?!
もし千にそんな脅迫されたら、百ちゃんだって困るよ!
意を決して握り締めていたスマホを開いて、履歴から百ちゃんの名前をタッチする。
また千が先に出たら···と思うと怖いけど。
百ちゃんが私を今日まで守ってくれてたんだから、今度は私が···千から百ちゃんを守らなきゃ!
だから、怒ってる千が怖いなんて···言ってられない!
呼び出し音を聞きながら、大きく深呼吸をする。
2回目の深呼吸をしたところで、呼び出し音が途切れた。
百 ー もしもし··· ー
あれ···百ちゃん?
いや百ちゃんに掛けたんだから、百ちゃんが出るのは当たり前といえばそうなんだけど。
でもいつもの百ちゃんの感じと違う、よね?
いつもだったら···
百 ー はいは~い!今日も元気な百ちゃんだよん! ー
···って感じで電話に出るのに。
って事は。
そばに千がいる?!
『百ちゃん、あのね···』
百 ー うん··· ー
やっぱり変だ。
どことなく小声だし、なんか···緊迫した感じがひしひしと伝わってくる···気がする。
この状況、どうしたらいいんだろう。