第4章 カケラの眩しさ
一「何か不測の事態が起きた時、一時的にでも代理があれば」
陸「なんでオレを見るんだよ」
環「おー!マリーさっきりっくんのポジションやってたし!」
陸「環!」
当人の私に構うことなく話を進めていくみんなに、なんて断ろうかという気持ちさえ薄まっていってしまう。
大「んで?お前さんはどうなのよ?」
『私、ですか?』
大「こんだけアイツらが盛り上がってんのに、まさか絶対にやりません!···とかいうつもり?」
メガネのフレームを指で押し上げニヤリと怪しげな笑みを向ける二階堂さんを見て、盛大に息を吐いた。
『分かりました。万理の用事もあるから、1回だけなら···いいですよ。その代わり、誰の場所をやればいいのかは、みんなが決めてください』
環「やった!じゃあマリーはりっくんのポジションな!」
陸「えぇっ?!オレだけ仲間はずれ?!」
万「まぁまぁ陸くん、そこは俺と一緒におとなしく見てようよ」
陸「万理さんが、そう言うなら···」
なんだかおかしな事になってしまった···と思いながら、解いていた髪を纏めあげる。
『あ、そうだ。ひとつだけ先に言っておきますけど、あくまでも私のは動画を見て覚えただけの物ですから、それ以上の事は期待しないで下さいね?』
大「完コピってヤツだな」
三「それでも陸のポジションやってみるとか、お前結構スゲーな」
『たまたまですよ。たまたま七瀬さんがセンターで1番見やすい場所にいるからです。他の人のも何となくなら出来ますけど、動きのある四葉さんや笑顔振りまくナギさんのコピーまではちょっと···』
身長差を考えても、1歩の間合いが私とは違い過ぎるし。
ナギさんに至っては、私にはあの王子様のようなスマイルは···覚悟が足りない。
大「じゃ、とりあえずやってみようぜ?」
一「七瀬さん、アナタは音響のスイッチをお願いします。佐伯さん、準備はいいですね?」
上着を脱いで椅子にかけた一織さんが私を振り返るのを見て、大丈夫です、と頷いた。
一「これはあくまでも試験的な物なので、失敗しても周りがカバーするので心配はいりません。そんな事は普段からですから」
陸「一織!お前ホントにかわいくないぞ!」
一「本当のことです」
2人のやり取りに思わず笑いながら、曲がスタートするのを待った。