第4章 カケラの眩しさ
小「万理くんが考えてる通りの結末になっていたかも知れない。恐らく、八乙女が愛聖さんに対して激昂したのは···その人物から声を掛けられてついて行ってしまったと言う事実の方だろう」
···なるほど。
確かに八乙女プロダクションの社長ともなれば、いくら仕事がないと言ってもいろんな方面で顔が効くから、全く仕事が探せないハズはない。
だとしたら、クビだ!と言われたのはもしかして?
売り言葉に買い言葉···的な?
愛聖がそれを鵜呑みにしてしまった結果が···とか?
じゃあ、本来ならば愛聖はここで研究生として閉じこもっているのは勿体ないって事か?!
だけど、愛聖があんな風に街を歩いていたからこそ、俺とも直接···再会出来たワケでもあって。
いまこうして、同じ事務所で···だから。
人の縁の回り方っていうのは、分からないもんだな。
小「ま、そういう事だから。愛聖さんの立場を守る為にも、なるべく早めに移籍した事を世間に公表したいとは思うんだ。それがプロダクションの社長でもある僕の仕事だからね···弱小だけど」
「社長···俺はそんな社長に一生ついて行きます!」
小「アハハ···それは冥利に尽きるねぇ」
そう言いながら、きなこをモフモフと撫でながら社長が笑った。
小「それで、万理くんに頼みがあるんだけど···いいかな?」
「俺に?なんですか?」
社長が俺に頼みたいことなんて、そんなにないだろうに。
そう思いながらも話を聞けば···
「俺が、ですか?そんなに上手く行くかなぁ···」
小「僕が説得するのも有りだけど、僕が相手だと本音を言い難いんじゃないかな?って。どう?頼める?」
「社長の頼みなら···だけど、俺にも本音なんて言うかなぁ、愛聖は」
社長は、俺になら···とか言うけど、どうなんだろう。
小「じゃあ、その件は万理くんにお任せするよ」
「はい···分かりました」
早めに復帰する事を説得···とか。
そもそも、逆に俺が音楽に復帰しろとか突っ込まれたら、どう逃げたらいいんだ?
そんな事を考えながら、愛聖説得作戦決行の戦略を考える事にした。