第4章 カケラの眩しさ
『お風呂ありがとうございました』
濡れた髪にタオルを当てながらリビングへ入れば、そこでテレビを見ていた三月さんが私を振り返った。
三「おぅ、っていうか!愛聖はここの住人なんだから、毎回お風呂ありがとうございますとかいらねぇからな?」
『えっと···すみません。なんかつい』
三「それに、風呂の順番もホントに1番最後でいいのか?なんだったら順番変えてもいいんだぞ?」
ソファーから体を捻ったままで三月さんが話し出す。
『私だけ性別違うし、最後の方が間違って誰かが入って来てしまうこともないだろうから。それに、私が最後だとお風呂掃除してから出て来れるから都合もいいんです』
ザッと掃除をして出てしまえば、あとは浴室乾燥のスイッチを押すだけだから。
三「そっか?お前が気にしないんなら別にいいけどさ?あ、それからさっきテーブルの上で電話鳴ってたぞ?···万理さんじゃないのか?」
私の電話?
万理だったらラビチャで···あ、もしかして···
スマホを手に取りながら、今日会った百ちゃんの事を思い浮かべる。
もし、百ちゃんだったら···約束したからかけ直さないと。
そう思いながらそっとスマホを開いて見れば。
‘ 不在着信 八乙女 楽 ’
そう···表示されていた。
三「結構長く着信音鳴ってたから、急ぎの用事とかじゃないのか?」
見ていた番組が終わったのか、テレビを消した三月さんがこっちに来た。
『あ、知らない番号だったから···間違い電話だったのかも』
三「知らない番号?そういうのは掛け直したりしちゃダメだからな?詐欺とかいろいろ危ねぇぞ?」
『分かってますって。そこまでお子様じゃありませんよ?』
自分でもぎこちない笑顔だっていう自覚はあった。
でも、まさか掛けて来た相手が楽だって事を言えるハズもなく···
『部屋に戻りますね···おやすみなさい三月さん』
三「ん?あぁ、おやすみ。ってか、風邪ひくからちゃんと髪乾かしてから寝ろよ?あと、足の湿布忘れんな?まだ腫れてんだからな?」
『了解です』
言われる通りに救急箱から湿布を1枚取り出し、ヒラヒラと見せた。
百ちゃんがみんな心配してる!と言ってた。
だから、1度だけ掛け直そうか、それともやめておこうか···迷いながらルームウェアのポケットに押し込む。