第4章 カケラの眩しさ
紡くんにはアイドリッシュセブンのマネージメントがあるし、万理くんは局に出入り出来ない彼の事情がある。
他の社員もみんな優秀だから頼れるとは言っても、僕が直接同行している方が不測の事態になった時に早い対応が出来る。
まだ少し、先の事にはなりそうだけどね。
「僕は、キミの実力があればどんな仕事でもやり遂げてくれると信じてる。けど今はまだ、研究生のままでもいいと思ってるんだ。いままで八乙女のところで休む暇もなく走り続けていたのだから、少しくらい長い休息は必要だからね」
『ありがとうございます、社長』
「ただ、今後もこういう風に声を掛けられるのも心労だろう?だから、今すぐではないにしても公表だけはしよう。もちろん僕も同席するから、キミは特に何も話さなくていいよ」
···と、言う感じで話は終わったけれど。
あまり大々的に公表するのも、彼女が嫌がるだろうし。
かと言って、公式サイト内だけで発表というのも···彼女が努力して重ねて来たキャリアを考えたら、きちんとしてあげるべきだとも思う。
八乙女なら、どうするかな?
···いや、間違いなく八乙女なら強行突破だろうな。
彼のやりそうな事だ。
時にはそれが必要かも知れないけど、そればかりじゃ···成り立たないのがこの世界だ。
彼は確かに敏腕ではあるけれど、それと比例するように敵も多く作って来た。
それでも折れることがなかったのは、八乙女の芯の強さなんだろうけど、僕にはその強行突破のみ!というのは向いてないからね。
それに今は、アイドリッシュセブンの事もある。
上手く立ち回らないと、共倒れさせてしまう可能性もあるから。
ー キュ~ ー
足元で鳴き声を上げるきなこを抱き上げ、一緒に窓から外を見る。
何かいい案はないかな?と思案を巡らせながら、そのふわふわのきなこの頭をそっと撫でた。