第4章 カケラの眩しさ
❁❁❁ 小鳥遊音晴side ❁❁❁
う~ん···いずれこういう日が来るだろうとは思っていたけど。
こんなにも早いとは予想外だったな。
目の前に置いた1枚の名刺を眺めながら、どうした物かと思考を巡らせる。
愛聖さんがケガをしたと聞いた万理くんが慌てて寮へ様子を見に行って戻ったら、愛聖さんが僕と話がしたいと言っていたと伝えられて。
夕方時間を作って話を聞いてみれば···
「えっ、スカウト?ホントに?!」
『はい。すみません···本当です。たまたま買い物に出た先で撮影してて、私もさり気なく通過したつもりではいたんですけど、帰り道で声を掛けられてしまって』
今日、近場で撮影をしていたのは···確か···Re:valeの百くん主演の単発ドラマの、だったかな?
『それで、私がここに移籍している事は公表していませんし、何とか断ろうとしたんですけど向こうも必死で、それで···出て欲しい、出ません!のやり取りをしている時に、百ちゃんに会ってしまって』
「まぁ、それは仕方ないとして。それで彼には話したのかい?」
『いえ···特に何も話してはいません。というか、話したくなければ無理に聞かないけど、自分が連絡した時は電話に出て欲しい。それを守ってくれるなら、私が話したくなるまでは何も聞かないし、他の人にも言わないって言われました』
交換条件というわけか。
なるほど···彼もなかなかの策士というわけか。
「僕はね、愛聖さん。本当の事を言うなら、キミさえ良かったら八乙女の所から僕の所へ移籍したという事実だけでも公表してもいいと思ってるんだ。どんな事情があるにせよ、移籍したという事にはウソ間違いはないからね」
『でも社長···私は仕事は···もう少し、待って欲しいんです。もちろん、公表したからと言ってすぐに仕事が貰えるとは思っていません。ただ···まだ少し、怖くて』
「大丈夫、ちゃんと分かってるよ。移籍した勢いだけで貰える仕事は怪しいものもたくさんあるだろう。だけどウチには優秀な事務員もいる。キミも知ってると思うけど?」
怖い···と言っていることに関しては、恐らく···あのプロデューサーの事もあるのだろう。
もし仕事を始めるとしたら、僕が直々に暫くはマネージャーを兼務して同行した方がいいだろうね。