第20章 明かされた事実
❁❁❁ 万理 side ❁❁❁
「はい、お水」
『あはは・・・ありがとう万理』
カラン、と氷が鳴るグラスを愛聖の手に持たせると、俺はそのまま隣りの職員の席に座る。
「それにしても随分飲んで来たね。明日二日酔いにならないといいけど」
社長と一緒にひとまず事務所に帰って来た愛聖は些かふらつきながら社長の手を借りて歩くのがやっとという具合いに酔っていた。
小「僕は車があるからって遠慮しちゃったから、僕の代わりに愛聖さんが断れなくなってしまってね。ごめんよ愛聖さん」
『大丈夫で~す!ぜーんぜん、酔ってません、っと。それよりいつものアレが出なくて良かったれーす。ふふっ・・・千たちもいたから絡まれまくったのは想定内でしたけど、まさか監督さんがあれほどガッツリな酒豪だとは知らなくて・・・ちゃんと意識がある内に帰る事が出来てホッとしてます』
グラスの水を飲み干してそう話す愛聖は、ちゃんと意識はあるだろうけど、それもどこが怪しいとさえ思える様子で。
確実に酔ってるよな、これは。
だいたい、酔っぱらいが酔ってないって言う時は酔ってるんだから。
「それより社長、このご機嫌な様子だと映画の話は決まったって事ですよね?」
小「そうだね。実は僕は今回の話は流してもいいんだよって言ったんだけど・・・」
「え?!そうなんですか?!」
社長の言葉に驚いた俺は思わず声が大きくなり、慌てて口を押さえる。
「それはまたどうしてです?」
そう問いかけると、社長は実はね・・・と社長がテレビ局に到着するまでに起きた愛聖の事を話してくれた。
「そんな事が・・・じゃあ愛聖に近付いたのもそういった理由があったからだとか」
小「その可能性は少なからずあるだらうね。愛聖さん自体も相当ショックだったようで、紡くんの話だと暫く立ち尽くしたままで泣いていたみたいだし。八乙女のところの姉鷺さんが通り掛かって、様子を見て驚いた彼女が手を貸してくれたって」
「・・・そんな事があったんですね。でも、それと愛聖の映画出演依頼を受けた事と、どんな繋がりが?」
小「それなんだけど、愛聖さんはそれを考慮しての決断をしたみたいだよ」
考慮、という言葉に俺は疑問を持ちつつも話の続きを待った。