第20章 明かされた事実
小「いま話したけど、奏音さんと愛聖さんには共通点がある。母ひとり子ひとりで共に支え合っていた事、それぞれの母親が病気で逝ってしまった事」
「それはそうですけど、でも、だからと言って愛聖だってなんの苦労もなくこの業界にいる訳じゃ・・・」
星の数ほど、とまではいかなくとも、アイドルになりたいだとか、音楽の仕事をしたい、女優に、俳優に、モデルにと希望を持って芸能への道へ続く扉を開く人は大勢いて。
それでもその夢を叶えられるのは・・・ほんのひと握りの人だ。
今でこそ絶対王者と呼ばれるRe:valeだって、千も百くんも何度も挫折をした・・・と、思う。
少なくとも千にとっての俺は、その挫折の理由のひとつだ。
小「そうだね、万理くんの言う通りだ。世間的には愛聖さんの後ろ盾に八乙女がいるから、いとも簡単にデビューしたと思われるかも知れない。だけど愛聖さんにだって、それなりに苦労や挫折はいくらでもあったと思うよ。いくら八乙女でも、なんの教養も付けずにこの世界に送り出すほど甘くはないからね。前に少し愛聖さんと話をした時も、僕が聞くだけでも八乙女がそんな事を?と思うことはたくさんあったしね」
「ですよね・・・俺が思うに、その奏音って女優は見た目も華やかだし、これまでの映像なんかを見ても才能と だと評価される部分はあると思います。それなのにこうまで愛聖を敵対視して恨むほどって、それはつまり・・・」
小「環境に恵まれなかった、っていう事もあるだろうね」
俺が言いたかった事を、小さくひとつ頷かながら社長が言う。
小「僕も少し調べてみたんだけど、奏音さんは元々は違う名前でこの世界にいたんだよ」
「そうなんですか?!え、でも、違う名前って・・・」
小「彼女がデビューするはずだったドラマがあってね。でも、そのドラマでデビューしたのは愛聖さんの方だった。もちろん愛聖さんの実力がなければ関係者だって直前でキャストを変更する事もなかっただろう。ただ、そのキャスト変更の裏には八乙女の動きがあった事も関係してる」
「それはつまり事務所の力で、という事でしょうか」
小「八乙女は使える力はフルに使うから、昔は良くない噂も耳にした。けど、いつからかそんな噂も聞かなくなったけどね」