第20章 明かされた事実
❁❁❁ 小鳥遊 音晴 side ❁❁❁
自分じゃないと片付かない仕事を終え、朝から別行動だった愛聖さんたちと合流し、紡くんから彼女を引き取ると身支度もあるだろうからと寮へと連れ帰る事にした。
局での出来事を先に紡くんから報告されていたから、それに関しての話を本人から聞こうとハンドルを握りながら構えていれば、僕から話を振る前に彼女の方から話を切り出され詳細を聞くことになる。
「そうか、そういう経緯が絡んでいたんだね。確かに八乙女のやりそうな事ではあるけど・・・」
『・・・はい。私も八乙女の社長の近くでいろんな事を見聞きしてはいましたが、まさか自分もそういった事に関与していたとは知らなかったです。自分が光を浴びていた裏側で、誰かを貶めて傷付けていたのは、本当に申し訳ない気持ちで自分を責めました』
伏せ目がちに話す彼女をバックミラー越しに見て、これはダメージが大きそうだと今後の仕事に響かなければ良いがと案じてしまう。
『それに奏音さん、私と同じ様に仕事を無くして、その、お母さんが入院している病院費用を稼がないといけなくて、手っ取り早くお金を稼ぐために自分を売ったんだとも聞かされました。でも結局はお母さんを亡くされて・・・もし、私が役を貰わなければ結果も違ったんじゃないのかと、言葉が出ませんでした』
これまでの、いや、八乙女が自分で立ち上げた事務所を大きくする為に裏でいろいろな事をしていたのは知っていた。
もちろん、八乙女プロダクションが愛聖さんのことを最推しとして売り込んでいた事も知っていた。
その裏では恐らく、多少なりとも強引な取り引きがあったのだろうと言うことさえ僕は分かっていた。
あの八乙女だから表立って騒がれるような事はしない。
そう考えていたけど、実際こうやって被害を受けた人が愛聖さんに正面からぶつかって来るだなんて八乙女は予測していたのだろうかと考える。
もし、八乙女のところから外へ出なければ、こういった事もなかったのかも知れないとさえ感じてしまう。
あの時のように、僕はまた愛聖さんを守ってあげられないのか。
そう考え始めた時、後部座席にいる愛聖さんが静かに大きく息を吐くのを感じて車を路地に寄せて停車させた。
「これは僕がいま考えていることだけれど」