第20章 明かされた事実
ー 自分が辛くても悲しくても、応援してくれる人の為に笑っていられる女優さんになりなさい。八乙女さんは厳しい事を言うかも知れないけど、本当はとても優しい人だから大丈夫 ー
誰かの為に、笑っていられる女優に。
八乙女社長に声をかけられて、女優になることを最初は反対してた母さんが言った言葉。
その言葉が、紡さんの言葉と重なりまた目頭が熱くなる。
私、まだまだじゃん。
誰かの為に笑うより、自分の事で泣いてばかり。
デビュー前に八乙女社長から受講した研修が辛かった時も、ほんの一瞬だけ疲れた顔を出してしまって、そんな顔を見せるならこの仕事は向いていない、いっそ辞めてしまえと怒られた。
チャンスも夢も掴み取る物。
例え何が起きても諦めない心が大事。
当時の姉鷺さんもそう言って私の背中を押し続けてくれた。
今も時々、そうしてくれている。
誰かの為に笑顔で。
それがずっと出来るほど私は強くない。
だったら、まず自分自身が笑顔でいられるように強くならなきゃ。
母さんのように。
そして、紡さんのように。
スン、と小さく鼻をすすり大きく頷く。
『紡さん、こんな私を好きだと言ってくれてありがとうございます。私、これからも頑張ります!紡さんのように私を好きだと言ってくれる人がいる限り頑張りたいです。どんな事があっても自分を恥じないようにまた走り出したいから』
突然の決意表明に紡さんは目を丸くしたけど、それでもいつもの様にふわりと笑って自分もお手伝い出来るところは頑張りますと返してくれる。
これからも走り続けるために、まずは奏音さんのことを何とかしないとダメだ。
社長に報告をして、それから千たちや天にも謝って。
そして顔を上げて笑っていられるように今後のことを考えよう。
私を壊してあげると言った彼女の言葉。
何をしてくるか分からないけど、それでも笑っている為に自分がどうしたらいいかをじっくり考えよう。
まずは、そこから。
膝の上でギュッと手を握りしめ、大丈夫、大丈夫と何度も心の中で唱える。
そんな私を見て、紡さんがそっと手を重ねて微笑んでいた。