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〖 IDOLiSH7 〗 なないろパレット

第20章 明かされた事実


卵焼きを口に入れつつ固まっている私を四葉さんが覗き込む。

「ち、違いますよ。兄さんの卵焼きはいつも優しくて美味しいです。今はちょっと考え事をしてい、」

環「あ!マリー歌うって!」

「はぁ・・・ホント、私の周りに人の話をちゃんと聞かない人ばかりなんでしょうね」

本日最初の盛大なため息を吐きながら、イントロが流れ始めた画面の中へと視線を移す。

環「なぁ、この曲、俺たち初めて聞く曲じゃね?」

「ミニアルバム発売を宣伝してるのだから私達が初めて聞く曲なのかも知れません。でも、」

環「でも?」

「いえ、なんでもありません」

環「変ないおりん」

四葉さんが初めて聞くというのなら、それでもいいと思うんです。

私はこの曲のアレンジバージョンを、一度耳にした事がありますから。

それは大神さんが佐伯さんにせがまれて、佐伯さんの部屋でアコースティックギターの調弦をしている時、聞こえたんです。

たどたどしく弦を弾いている、佐伯さんの歌声を。

逢坂さんに頼まれてお茶を運び、ノックしようとしたら大神さんと佐伯さんが話す声が聞こえてその手を止め、歌い終わるまで聞き入ってしまったんです。

『弾きながら歌うのって、結構難しいね。千はよく出来るよなぁ』

万「それは向こうはそれでご飯食べてるからだよ。プロだからね」

『プロ、かぁ』

万「ちなみに言っとくけど、俺のは趣味の域から出てないからアレンジバージョンを手伝えって言われても、大した手伝いは出来ないからね?」

そう言いながらもお手本と称して弦を弾く大神さんも、なかなかの腕前だと思いましたが。

環「マリーってさ、なんかスゲーよな?」

急に何を?と返せば、四葉さんがモグモグと口を動かしながら画面に釘付けになっている。

環「女優って仕事も色んなとこで認められてっし、歌も上手いじゃん。なんかズリーし、スゲーって思った」

「それは佐伯さんが頑張って来た証なのでは?少なくとも私はそう思いますが」

以前在籍していた事務所の教育方針なのもあるでしょうけど、と加えれば四葉さんはマリーは頑張り屋だしな!と笑顔を見せる。

「私達も負けられませんね」

そう言った私の声が届いているかは分かりませんが、四葉さんは残りのお弁当を食べ続けていた。


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