第20章 明かされた事実
「でも、お掃除が」
姉「いいわよ、そんなの。この子を楽屋に届けたら清掃員に連絡してあげるから。さ、早く行くわよ」
言いながらドアを抜け、そう言えば楽屋はどこかしら?と振り返る姉鷺さんにその場所を伝えると、相変わらずちっちゃい楽屋にいるのねと笑いながら足早に通路を進んで行く。
その足早さは私が小走りになるほど早く、あっという間に楽屋へと着いてしまう。
姉「まずは着替えなさい、ほら早く脱いで」
「あの姉鷺さん?!着替えのお手伝いなら私がやりますので、姉鷺さんはそちらでお待ち下さい」
いくら姉鷺さんとはいえ男性の方にと思って言えば、平然とした感じでこの子も私も慣れっこよ、と言われてしまう。
姉「今更お互い隠すものなんてないのよアタシ達は。付き合いもそこそこ長いしね」
だから早く着替えなさいと手を伸ばした姉鷺さんの手を、愛聖さんが振り払った。
『姉鷺さん、聞きたい事があります』
姉「そんなの幾らでも聞くから先に着替えなさ、」
『今すぐ聞きたいんです!!』
いつもとは違う強い口調に私も姉鷺さんも驚いた。
『さっき、奏音さんに会って聞いたんです』
姉「奏音?あぁ、あのやたらTRIGGERに絡んで来たっていう女優ね?それで、その奏音からアンタは何を聞いたの?」
そう言いながらも姉鷺さんは私が鞄から出したタオルを取って愛聖さんの髪を拭こうと手を伸ばす。
『私が八乙女プロダクションからデビューするって決まった時のドラマ、本当は私じゃなくて奏音さんに決まってたって。私がそれを自分がデビューする為に横取りした、って』
苦しげに話し出す愛聖さんの言葉に、姉鷺さんがその手を止める。
姉「何をおかしな事を吹き込まれたのかしら。アンタがデビューする時までアタシがアンタの付き添いをしてたのよ?そんなことある訳ないでしょ?」
『でもそう聞いたんです!奏音さんにはたった一人の家族が、お母さんがいて、病気で入院していて奏音さんのデビューを心待ちにしていて!でも、私のせいで!・・・奏音さんのお母さんはテレビに映る奏音さんを見る事がないまま・・・亡くなったって・・・』
その話は、愛聖さんの亡くなったお母さんのお話とよく似ていて、ただ聞いている私も胸が痛くなる。