第20章 明かされた事実
『私は、母さんがどれだけ病気で辛くても知らずにこの仕事をしていて、忙しい事を理由に最期の時に間に合わなかった。八乙女社長がその瞬間一緒にいてくれたから、ひとりで逝かせてしまった訳じゃないけど、それでもずっとずっと、せめて最期の瞬間には母さんの側にいたかったって後悔してる!なのに奏音さんのお母さんは誰にも側にいて貰えない状態で息を引き取ったんだって。私の、せいだって・・・』
姉「それは違うわ。奏音の母親かどうだってのは別にアンタのせいじゃない。アンタのデビューのきっかけで、たまたま奏音のデビューのチャンスを逃してしまったのは関係ない。アンタの方が実力も知名度もあった、それだけの話しよ」
姉鷺さんは、そんなのはただ理由付けてやっかんでるだけ、逆恨みにも程があると続ける。
姉「よく聞きなさい愛聖。この業界、確かにそういう事で潰されたりするタレントは山ほどいる。だけどね、そんな事を乗り越えて生き残ることが出来る人間が勝ち組なのよ。それは奏音もアンタも条件は同じ。もちろん、TRIGGERや、アイドリッシュセブンも、Re:valeだってそう。転んで傷ついて立ち上がれるか、そのまま起き上がることも出来ずに蹲っているままかの違いだけ。八乙女社長から離れて今の事務所へ移ってからアンタは立ち上がったじゃない、自分の足で。だったらつべこべ言わずに歩き続けなさい」
この業界でまだ経験なんてほとんど皆無な私には愛聖さんに言ってあげる事が出来ない言葉の数々を、姉鷺さんは凛とした姿で正面から話し、その姿に自分はどれだけ頑張れば姉鷺さんのようになれるんだろうと手を握り締める。
私にもいつか、愛聖さんやアイドリッシュセブンの皆さんに言える日が来るのだろうか。
『姉鷺さん・・・もし、奏音さんが私だったら、同じ事を言えますか?』
私と同じようにギュッと手を握りしめた愛聖さんが、俯いたまま姉鷺さんへと言葉を投げる。
姉「さぁね?それ以上なんか言うなら、その口塞ぐわよ?」
『でも!奏音さんは私だったかも知れな、ンッ・・・』
ほんの、一瞬の出来事だった。
悲痛に声を上げる愛聖さんの頭を抱えるようにして、姉鷺さんが・・・って、えぇっ?!
わ、私は今、何を目撃してるの?!
あ、姉、姉鷺さんっ?!
姉「塞ぐって、言ったよ?」