第20章 明かされた事実
❁❁❁ 小鳥遊 紡 side ❁❁❁
あれ、いない?
買い物を頼まれて楽屋に戻れば、その姿はなく。
「愛聖さん、いらっしゃいますか?」
テーブルに買って来たものを置きながら声をかけるも返事はなく。
まだお手洗いから戻っていないんでしょうか?
スタジオから別行動になる時に聞いた行き先を思い出し、もしかしたらその途中で今朝のようにRe:valeのおふたりとバッタリ会ってお話でもしているのかと考えながらスタジオから楽屋までにあるお手洗いへと歩き出す。
このテレビ局では以前、#NAM1E#さんにとって重大な事が起きた場所でもあるからなるべく離れないようにと社長に言われていた事も同時に思い出し不安が募る。
何もなければいいけど、とその足もやがて早足になり目的の場所へとすぐに到着した。
扉にはめ込まれた磨りガラスの向こうに人影はないけれど、もしも急に具合いが悪くなって蹲っていたら大変だと迷いもなく扉を開け中に入ればお手洗いの個室は全て未使用だと分かり、だとしたらいったいどちらに行かれたんだろうかと思った時、壁際に座り込み俯く愛聖さんを見つけた。
「愛聖さん!」
力なく項垂れる体に自分も屈みながら声をかければ、その体は水に濡れていた。
「大丈夫ですか?!」
髪も、衣装までも水浸しな姿に驚きながら言えば、愛聖さんは漸く顔を上げ私を見ると大粒の涙をホロホロと零しながら泣き出した。
ポケットからハンカチを取り出し零れ落ちる涙にそっと当てながら、こんな時こそ自分が落ち着かなければと静かに息を吐く。
『紡さん•••私、どうしたらいいんだろう・・・』
泣きながらやっとな感じで言う愛聖さんを見て、ひとまず楽屋に戻りましょうと声をかけるも、その首は小さく振られてしまう。
『私・・・最低なんです・・・知らなかったとは言え、奏音さんの事・・・』
そう言うとまた愛聖さんは泣き出し、蹲ってしまった。
奏音さん・・・?
そう言えばその方は確か、愛聖さんが前に自分を憧れとしてくれていて仲良くなったんだと嬉しそうに話していた人物だと思い出す。
その方の名前が出るということは、少なからずここで奏音さんと何かあったのだと予測がつく。