第20章 明かされた事実
「びっくり?私だって小さいながらも事務所に所属して、細々と芸能活動をしてるのに、そんなに驚くことかしら?」
どうしてなのか今日の奏音さんはどこか苛立ちを見せ、以前とは違う態度を示す。
「あぁ、そっか。愛聖さんは私と違って恵まれた環境にあるから私みたいなたいした仕事のない人間がテレビ局にいるのを見たらびっくりしちゃうって事?」
『別にそういう訳じゃ・・・それに、この仕事に大きいも小さいも、恵まれてるとか、そういうのはないと思います。頑張った分だけ、ちゃんと見てくれてる人がいる、そういう世界だと思うから』
私だって、あんなに大きな八乙女プロダクションにいても仕事がない日が続いて、そして今は八乙女社長のところに比べたら小さいかも知れないけど、それでもちゃんとここにいる。
それは確かに恵まれた環境だと言えるかも知れないけど、それでも自分自身の頑張りだって少しは評価されていると信じたいから。
「せっかくだから教えてあげる。この業界はね、どれだけ頑張って掴んだチャンスでも簡単に奪われてしまうこともある。下積みが長くてやっと掴んだチャンスを、大手プロダクションの社長お気に入りの新人の為に、事務所の力で奪い取られる事が・・・そう、例えば私みたいな?」
『どういう事、ですか?』
「まだ分からないって言いたいの?!」
『冷た・・・』
突然浴びせられた水の冷たさに漏らせば、奏音さんは蛇口に手を押し当てて私へと水を浴びせ続ける。
『やめて下さい!何をしているのか分かってるんですか?!』
「その言葉、そっくりそのままお返しするわ!アナタは何も知らないとでも言いたいの?!アナタのせいで私がどれだけ苦労して来たか!私はアナタのせいで1番最初の仕事を奪われたの!八乙女プロダクションから期待の新人がデビューする。その最初の仕事は、本当は私が受けた仕事だったのに!!」
『う、そ・・・でしょ・・・』
私が八乙女社長の所でデビューが決まった仕事は、八乙女社長が自ら持ち掛けてきた仕事で。
その仕事は小鳥遊社長が楽しみに見ていたんだと話してくれた、あのドラマ主演で。
「思い出した?あのドラマはね、オーディション最終に残った私に貰える仕事だった。それなのに、途中からオーディションに参加した八乙女プロダクションの佐伯 愛聖が主演決定って・・・」