第19章 魔法のコトバ
❁❁❁ 小鳥遊 音晴 side ❁❁❁
「うん、分かった。それなら相手方とのスケジュール調整は僕に任せて?あぁ、大丈夫だよ。それも僕の仕事のひとつだし、事務所を空けてても万理くんがいるから心配ないよ。それじゃ、ひとまず連絡してみるから待ってて?うん、うん、それじゃ」
愛聖さんからの電話を終え、ふと、思う。
この間はあれだけ迷ってたと思うんだけど、どういう気持ちの変化があったんだろうか、と。
ドラマの方は彼女が望んでオーディションを受けた結果で出演する事になった。
だがしかし、映画の方の話はそうじゃない。
原作者が是非にと監督を通して話を持ち掛けてきた物だ。
この業界、そういった事はよくある事でもあるから珍しくはないけど、僕としては彼女の熱心なファンだという原作者が無理をごり押しして来る事もあるのではないか?という心配点もある。
一概には言えないが、あなたのファンなんです!と言われたら、言われた方はその人物を邪険に出来ない。
特に彼女の場合はウチに来た特殊な事情から、昔からファンだと言われたら、それこそ八乙女のところからウチに移籍した自分を応援してくれているからと、そういった人達を大切にするだろう。
まぁ、それはどこのどんなタレントだって当然そうするだろうが・・・
まずは詳しいお話を伺いたいという愛聖さんの要望を伝えないとだ。
先方の連絡先を確認してデスクの電話を取ろうとすると、万理くんから内線が届く。
万 ─ 社長、外線1番にお電話が入ってます。愛聖の映画出演の話で詳細を伝えたいとの事です ─
「分かった、ありがとう」
なんてタイミングのいい電話だと心で笑いながら外線へと繋ぐ。
「お待たせ致しました、小鳥遊です」
電話の内容は万理くんから聞かされている通りの事だったけれど・・・
「え?そうなんですか?えぇ、よく存じております。彼はうちの佐伯とも親交がありますから・・はい・・・はい・・・なるほど・・・そうですね・・・その件につきましてはこちらからもご連絡させて頂こうと思っていた次第でありまして。え?!明日ですか?少々お待ち頂けますか?・・・えぇ、大丈夫です。お時間はそちらに合わせる事は可能です、承知致しました。ではその時間に宜しくお願い致します・・・えぇ、それでは失礼致します」