第19章 魔法のコトバ
立てますか?と体を引き上げると、弱々しくと両足を何とか立たせながら佐伯さんが体のバランスを保つ。
『すみません一織さん。ありがとうございました』
目隠しで表情が見えない状態ではあるものの、その口調から気持ちは汲み取れる。
『それから怒られついでにというか、目隠しも解いて頂けると・・・』
・・・は?
「ご自身で施したのなら、自分で外せるでしょう?」
今更なにを?と返せば、背後から慌ただしく駆け寄る足音が届き振り返る。
環「いおりん待った!マリーに怒んなって!それ俺のせい!」
三「2人とも大丈夫か?!」
四葉さんに、兄さん?
「四葉さんのせい、と言うのは?」
環「だから!それ俺のせいだし!マリーの演技の練習っつうか、それで俺が目隠しすりゃいーじゃんって」
「はぁ・・・ちゃんとよく分かるように説明して貰えますか?四葉さんのそれじゃ、全然話が分かりませんね」
呆れながら返せば、自分も環に聞いた話だけどな?と兄さんが四葉さんの代わりに事の詳細を説明してくれる。
「なるほど、分かりました・・・では済まされませんね。ただでさえ佐伯さんは慌てんぼうで、おっちょこちょいで、注意力散漫気味な所があるのに四葉さんからの提案とは言え、こんな危ない事を易々と実行するとはありえません」
『うぅ・・・耳が痛いです一織さん』
三「さすがに言い過ぎだろ一織。確かに、いくら愛聖がそそっかしいって言っても可哀想だろ」
『三月さん、それトドメ刺してます?』
三「あ、わりぃ。そういうつもりじゃねぇけど、愛聖も思いつきで動くんじゃなくて、もっと考えてからにしとけ?って事だよ」
兄さんが宥めるように言うと、佐伯さんは小さくすみません・・・と肩を落とす。
「全く、人騒がせな・・・とりあえずその目隠し外しましょう。佐伯さん、ちょっといいですか?」
ひと言声を掛けて佐伯さんの両肩に手を置きくるりと後ろを向かせ結び目に手をかける、も。
「四葉さん、いったいどれだけの力で結んだんですか。キツくて取れませんよ、これ」
環「だって簡単に取れたら目隠しの意味ねーし。いおりん代わって?俺がやる」
言われるままに四葉さんと場所を入れ替わり様子を伺うと、結んだ本人には難なくそれが解ける。