第19章 魔法のコトバ
万理から教えて貰ったサイトで映像化する原作を読み始めて、まる2日経った。
それほど長いストーリーではないから、何度も何度も読み返しては場面を想像してみる。
病気が原因で視力を失ってしまった女性。
それまで見えていた世界が、徐々にではあるけれど見えにくくなり、やがてその瞳からは色が消えてしまうだなんて・・・
覚悟はしていただろうけど、その悲しみはきっと本人にしか理解できない物なんだろうと思う。
その本人の役を私に是非と言ってくれている作者のプロフィールを開ければ、そこには確かに佐伯 愛聖が好きだと堂々と書かれていてちょっと照れる。
いや、照れてる場合でもないけど。
『今日で3日か・・・』
時間さえあれば昼夜構わずパソコンと睨めっこを続け酷使した目をギュッと瞑り、明日には社長を通して相手方に返事をしなければならないんだと考え耽ける。
やってみたいと思う気持ちが半分。
だけど難しい役でもあるから、果たして私に出来るのだろうかという気持ちが半分。
色のない世界で静かに生きているって事は、撮影中は当然、お相手役となる役者さんがいてもその人がどんな人なのか分からない行動が必須になる訳で。
それも勿論だけど、その女性が見えない世界でどうやって生活をしているのかという所作も大切になる。
『所作、かぁ・・・』
相手役がどうのって言うより、そっちの方が大事なのかも知れないよね。
だって自分の目の前に誰がいるのかは、会話や声で分かるかもしれないけど、日常生活となれば会話も声もある訳ではなく。
ひとりの時間を、見えない世界でどうやって生きているんだろうと想像してみるも、思うように情景が流れてはくれない。
『やっぱり私じゃダメかも知れないな』
「ダメって、なにが?」
ぽつり呟けば、いつの間に部屋に私の部屋にいたのか四葉さんが私を覗き込む。
『四葉さん?!どうしてここに?!』
環「どうしてって、俺何回ももマリーのこと呼んだのに気付いてくれねぇし」
『そうだったんですか?!それはごめんなさい・・・今ちょっと考え事してて四葉さんが声を掛けてくれたの気付かなくて』
ホントごめんね?ともう一度言って、ここに来たって事は私に用があったんでしょ?と聞いてみる。
環「用って、まぁ・・・学校で課題っつーか、宿題出されてさ」