第19章 魔法のコトバ
そこまで言って、おかりんは言葉尻を濁しては僕たちを交互に見た。
「どうやら佐伯さんは酔っていらしたみたいで、その勢いでと言うか自分に電話をかけてしまったようです。先程のはそのお詫びと、それからお知らせをっていう電話でした」
愛聖が酔ってた?
疑念を込めた視線を投げれば、それを受けて話を続ける。
岡「同じ寮に住む彼らと飲んでいて、急に人恋しくなったとかで電話をしてしまって申し訳ないと。ですが昨晩の佐伯さんはお酒が入っていたせいもあって何だか甘えん坊な感じが可愛かったんです。それをお伝えしたら電話の向こうでとても恥ずかしがっていて、そういう所も可愛らしい女性ですよね」
その時の事を思い出したのか、おかりんはどこか楽しげに目を細めてる。
そうか、そんな理由でおかりんに電話をしてしまったのなら仕方ない。
・・・じゃない!
人恋しさの相手がなぜ僕やモモではなく、おかりんなんだ!
違う。
なぜ僕じゃなかった!
駆け巡る思考と共に眉間の溝が深くなって行くのが自分でも分かる。
百「ユキ?イケメンが崩れかけてるけど、気付いてる?」
苦笑を浮かべながら言うモモに大丈夫だと視線を投げ、今一度おかりんに向き合った。
「おかりん、一応念の為に言っとくけど」
岡「はい、なんでしょう?」
「今から僕はおかりんに魔法をかける」
岡「・・・魔法、ですか?」
突拍子もない言葉を言われたおかりんは、不思議そうな顔でち眼鏡を指先でツゥっと押し上げる。
「よく聞いて、ちゃんと繰り返して?言うよ・・・もし愛聖に手を出したら、僕たちは・・・」
岡「えっと、佐伯さんに手を出したら、自分と千くんは・・・」
「・・・絶交だ」
岡「絶交・・・えっ?!絶交ですか?れいや、その前に佐伯さんに手を出すなんてこと自分には出来ませんよ?!」
百「絶交って、あ、オレ分かっちゃった!ユキってばおかりんにヤキモチでしょ!」
カラカラと笑いながら言うモモにうるさい!と返し、魔法はかけたからね!とおかりんに約束する。
愛聖が遠くない将来、誰を選ぶかは分からない。
僕を選んでくれるとも限らない事は、承知。
けど、その未来が来る前にライバルは減らしておきたいのも事実。
これはモモが言うようにヤキモチ、だろうか?