第19章 魔法のコトバ
百「うわぁ?!だからユキってば!ペットボトルそんなに握りつぶしちゃダメだってば!モモちゃんが水も滴るいい男になったじゃん!」
僕の前に屈んでいたモモが、濡れた前髪に手を当てながら頬を膨らませる。
「悪かったよ。それよりも・・・ちょうど終わったようだね」
電話で話をしていたおかりんが、ではまたと最後に言って通話を終えたのを確認すると、スっとソファーから立ち上がり即座におかりんを壁際へとジリジリ追い詰める。
岡「あ、の?千くん?」
「今の電話、なに?」
岡「なに?と言うのは?」
「だから、今の電話の相手」
壁ドン状態にもかかわらず、普段通りの表情で言うおかりんに1つ小さく息を吐い言う。
岡「え?あぁ、佐伯さんからですよ。あ、もしかして千くん用事があったとか?それなら言ってくれたら電話代わったのに」
違う。
そうじゃなくて!
「だから!相手が愛聖だって言うのは会話の中で名前が出てたんだから僕にだって容易に分かる。僕が聞きたいのは、昨夜の愛聖が可愛かったって言ったおかりんの言葉だよ」
百「そうそれ!それはオレも知りたい!」
床掃除をしながら僕たちの様子を見ていたモモが立ち上がり、そのまま会話に参加してくる。
百「ユキやオレなら、それこそどこかしこでマリーとの接点あるけどさ?おかりんはそうじゃないじゃん?」
「そうね。しかも昨夜は僕たちを送り届けてから、おかりんはフリーな訳だ。たまたま偶然どこかで愛聖と会った?それとも、元々から仕事が終わってから愛聖と会う約束でもしてた?・・・どっち?」
岡「いやぁ、それはですね・・・なんと言うか、まぁ」
なんて話そうか迷うおかりんを僕とモモが更に詰める。
「教えてくれないなら、この後の仕事ボイコットするけど、いい?」
岡「それは・・・あぁもう!分かりました!話しますからそこに座って下さい」
漸く観念したのか、おかりんは眼鏡をクイッと指で押し上げて僕たちをソファーへと促した。
岡「実はですね・・・昨夜仕事が終わって2人を千くんの家に送り届けたあと事務所に戻った時、佐伯さんから電話がかかって来たんです」
「愛聖から電話が?」
岡「えぇ、そうです。夜更けに急用でもと思って出たんですが・・・その・・・」