第19章 魔法のコトバ
・・・た、ハズなんだけど?!
こっ、ここここここ、これはいったいどういう事なの?!
ピリッ伝わる頭痛に薄ら目を開ければ、そこに見えて来たものは自分の部屋の景色なんかではなく、至近距離にある誰かの衣服。
この色や素材、そしてデザインからして恐らくそれは昨夜見た四葉さんが着ていた物に間違いはない。
じゃなくて!!
冷静に誰の衣服かを分析してる場合じゃないよ私!!
考えるべきは、なぜ私が四葉さんの腿を枕にしてリビングのソファーで寝ているのか?!だよ!
確かに昨日の夜は三月さんに勧められて、三月さんがプルタブを開けた二階堂さんの缶ビールを受け取った。
けど、ひとくち飲んでやっぱりビールは苦いから苦手だと笑ったら、それならこっち飲めばいいじゃん?とフルーツ味の缶チューハイと交換してくれて飲んで・・・
その甘くて口当たりのいいのど越しに2本、3本と逢坂さんも加わっておしゃべりしながら次々と勧められるままに飲んで、騒い・・・で?
あ、あれ?
この辺りからなんだか記憶が曖昧になってるような?
あの後、どうだったんだっけ?
なんか途中から万理のもいたような・・・かもする。
いやいやそんなはずはないよね?
だって万理は社長が戻るまで事務所にいるとか言ってたし、社長は帰ったんだから当然その留守番してた万理だって帰宅しただろうし。
とか、そんな事を考えている場合でもない!
いま私がすべき事は、どのタイミングで起き上がればいいのかを考えなくては!
ってより、四葉さんが私の髪をスルスルと指で遊んでいる感覚がするって事は、多分まだ私が寝ていると思っているからそうしてる訳だし。
よし・・・うん、ちょっとこっそり状況把握をする為にもゆっくり寝返りをうつフリをして周りを見てみよう。
それから、いかにもいま起きました的な感じで起きて。
わ、笑ってごまかす作戦を実行すればこの場は逃げ切れる・・・かも知れない。
じゃあ、と小さく息を吐いて寝返りを試みようとした瞬間、それは予想外の言葉に阻まれる。
万「よし、これで味噌汁は出来た。三月くん、そろそろ朝ごはんを並べようか」
三「ん。万理さんの味噌汁が飲めるだなんて二日酔いもたまにはいいもんだな。こっちも卵焼き出来たし、一織、ちょっと壮五と大和さんの部屋行って声掛けて来てくれ」
万理いるの?!なんで?!