第19章 魔法のコトバ
寮に帰って来た時、社長があの時の事情を知っているみんなに今日の事を話しておく必要があると言って、さすがに楽のお蕎麦屋さんの事は伏せてはくれたけど出先で犯人と思しき人物と顔を合わせてしまった事を伝えた。
それを聞いた逢坂さんは、社長が帰った後ソファーに座り込んだままでいた私の隣りに座り、心配そうな顔を見せながらそっと私の手に自分の手を重ねた。
僕たちがついてるから大丈夫だ、と、その手が物語るかのように優しくて、胸の奥が暖かくなった。
環「マリー、今日は特別に王様プリン2個食っていいぞ。なくなったらまたヤマさんに買ってもらうし」
壮「環くん、そういう問題じゃないと思うんだけど」
環「王様プリン食ったら、元気出るじゃん」
ほら、と差し出された四葉さんの手には王様プリンがふたつ握られていて、目の前でユラユラと揺らされていた。
『ありがとう。でも、王様プリンはひとつで大丈夫だから一緒に食べましょう』
環「オッケ。そんじゃ、そーちゃんそこどいて。俺が座る」
壮「どいてって、反対側に座ればいいだろう?」
環「ダメ。そーちゃんずっとマリーの手を握ってるからズルい。俺と交代」
壮「ちょ、環くん?!」
早く場所を開けろと言わんばかりに四葉さんが逢坂さんと私の間に体を押し込むと、それを見ていたナギさんがすかさず空いている側にポスンと腰を降ろす。
ナ「マリー、ワタシと一緒に寝れば怖くアリマセンよ?」
『え?なんでそういうことに?!』
いつも以上にキラキラとした笑顔のナギさんに驚き笑いを返していると、ドンッといくつかの缶をローテーブルに置きながら三月さんが私たちの向かい側へと座った。
『三月さん、コレって?』
二階堂さんがいつも飲んでいる缶ビールや、時々ちょびっと三月さんが飲んでいる甘い缶チューハイが並ぶのを見て、三月さんの顔を見る。
三『イヤな事があったら飲んで騒いで忘れろ!とまでは行かなくても、程々にしとけば前みたいな事にはならないだろうし、たまにはこんな家飲みがあってもいいんじゃねぇかと思ってさ?酒は大人組だけしか飲めないけど、未成年組は一織が飲み物準備してるしパーッと気分転換しようぜ?』
なっ?と微笑まれて、せっかくだからと私もそれを受け取って。
三月さんがお前もどうだ?って、逢坂さんも一緒に飲み始めて騒いで笑って・・・