第19章 魔法のコトバ
愛聖はここへ来てまだそんなに経ってないから、知り合いだなんてそう多くはない。
と、思う。
出掛けて行った時間を考えれば、知り合ったばかりの相手でもなさそうだ。
と、思う。
かと言って相手が千や百くんだったなら社長はそう言うだろうし。
それにもし千たちが一緒にいたなら、この件に関してもっと騒ぐんじゃないか?
・・・と、思う。
いずれにしても出掛け先で誰とどんな時間を過ごしていたのかは分からないけど、どうして犯人だと思われる人物にあったのに届け出をしないと言ったんだ?
被害は充分に受けてる。
それならば早く心から安心したいと思うのが普通なはずなのに。
いや、そうじゃないな。
もしあの事を知らない相手なら、わざわざ知られたくないだろうし大きな騒ぎにもしたくないって事になるよな。
若干モヤモヤする気持ちを落ち着かせながら、香しい香りを立ち込め始めるマシンの横にカップを並べていると、ポケットの中で小さく存在を示す振動が伝わって来た。
もしかして愛聖か?!と迷いもなく画面を見れば、二階堂大和と表示されていて。
「はい、大神です」
大「万理さん、いまドコ?」
「まだ事務所だけど、忘れ物でも?」
大「あ、いやそうじゃなくて。社長から・・・聞いた?」
何をとまで言わなかったけど、それは愛聖の事だと分かる。
「あぁ、聞いたよ」
そう答えながらも、社長は寮に送り届けた際に大和くんたちにも事情を知っているからと話してきたと言っていたから、話を聞いた事で心配事があるのだと思い今からそっち行こうか?と加えた。
大「万理さんが来てくれるなら助かる・・・実はちょっと厄介な事になっちゃっ・・・コラコラやめなさいって、お兄さん今は大事な電話してるんだから」
『大事な話ってぇ~、お仕事~?』
ズルっと脱力するような愛聖の声が聞こえ呆気に取られる。
大「そうそう!お仕事お仕事!だからほら、あっち行ってなさいっての・・・イチ、タマ!ちょいこの酔っ払いなんとかしてくれ」
よ、酔っぱらい?
え・・・酔っぱらい?!
「大和くん?!まさかとは思うけど、愛聖にお酒飲ませた?!」
大「あはは、大正解。でも勧めたのはオレじゃなくてミツだけどな。嫌なことは飲んで忘れちまえ!とかなんとか・・・ハハッ・・・」