第19章 魔法のコトバ
「まったく、最近の若いモンはヤンチャばかりで困るわい。おい坊主、客はもうワシらと後は2組だけだ。嬢ちゃんをちと休ましてやったらどうだい?」
「あぁ、悪いけどそうさせて貰う。すぐじいさんも来るだろうから、いつもの感じで好きにやっててくれ」
じゃ行くぞ愛聖、と言いかけて、その顔色の悪さに驚愕する。
「お前・・・どうしたんだよ、大丈夫か?」
見るからに蒼白し顔にそっと手を当て身を屈めてよく見る。
『あ・・・が、楽・・・いま・・・の人・・・』
「いまの?あぁ、アイツらだったらもう居ない。心配すんな」
余程イヤな思いをしたんだなと言えば、そうじゃなくてと小刻みに震え出した。
「とにかく向こうで休んどけ。じいさんたちと入れ替わりなら誰もいなくなるからゆっくり出来るから」
な?と言いながら背中をさすれば、力なく俺の体に愛聖が腕を回してシャツを掴む。
「おーおー、こっちはこっちで若いモンはいいなぁ!」
「こりゃひ孫が見れるのも近いか?」
茶化す常連共にそんなんじゃねぇよと視線を投げ、いったいどうしたんだと愛聖を抱き込むようにして奥の部屋へと連れて行った。
「楽、嬢ちゃんどうかしたのか?」
奥の部屋に行けば、着替えを終えたじいさんが俺たちの様子を見て目を丸くする。
「あぁ・・・ちょっと、な。だから悪いけど少し休ませる」
「あら・・・顔色も良くないみたいだし、貧血かしら。ほら楽、そんなとこ立ったままでいないで座らせておあげなさい」
いそいそと座布団を用意するばあさんに言われ、愛聖に付き添いながらその場まで歩く。
「店ん中はいつもの常連とあと2組だけで新しい客は来てねぇから、じいさんたちが戻るまでは常連たちが適当にやってくれるってよ」
「あら!あの人たちに自由させたらお店潰れちゃうわ」
「だな、それは阻止せんといかん。あぁ、いい、いい。また配達が入って忙しくなったら呼ぶから、楽はそれまで嬢ちゃんと休んどけ」
立ち上がろうとする俺を手で制して2人が店へと消えていく。
「ったく、変な気を使いやがって」
店へと続く扉を見ながら言えば、愛聖がゆっくりと顔を上げた。
『ごめんね、楽。もう、大丈夫・・・だからお店の手伝い、しよう?』
そう小さく話す愛聖に目線を落とし、小さく笑って見せる。