第18章 Return to Myself
大「で、そこまで披露してくれたんだから、もちろん、見せてくれるんだろ?」
『なにをです?この衣装はまだ試作品って言ってたし、これ以上はまだなんともお見せ出来ないんですけど?』
大「いやいやいや。なにを仰いますか、オレたちが見たいのは衣装もそうだったけど、おまえさんのその衣装に合わせた曲とフリよ、フリ」
『・・・え?』
って言うか、はぁっ?!
大「オレたちアイドリッシュセブンの曲を完コピ出来ちゃう愛聖は、もちろん今日練習したっていうやつも大方バッチリなんじゃないの?って言うかそうそう、オレが陸を庇ってケガしてリハ休んだ時もちゃんと出来たし・・・見せてくれる、よな?」
レッスン場の蛍光灯にキラリと眼鏡を光らせながら、二階堂さんはグッと私の肩に圧力をかけてくる。
『あ、いや、でも、ほら?今日の記録をしたディスクはあっても映し出すモニターとかないじゃないですか。なので、それは、』
またの機会に、って言おうとしたら。
万「みんなお待たせ~!普段使わないから事務所の倉庫の奥にしまってあったみたいだから持ってくるのに時間かかっちゃって。お待ちかねのプロジェクター機材一式でーす!」
それはまるで打ち合わせでもしたかのような機材一式を抱えた万理と、そろ後に続いて顔を出すご機嫌な・・・
小「大和くんから電話貰った時は何に使うんだろうと思ったけど、いやはや、愛聖さんが早速あの曲をご披露してくれるだなんて僕は嬉しくて事務所に戻ったのにまた来ちゃった」
社長まで来てるし!
万「じゃあこれから始まるのは愛聖のプチリサイタルって事なのか?それにしても、なんだか凄いラブリーな衣装だね。可愛いよ、愛聖」
『褒めたってなにも出ないし!』
むしろ出すよりいろいろ隠したいくらいだし!
そんな気持ちを知ってか知らずか、万理は笑いながらも機材を設置していく。
万「いいよ出なくても。可愛いのは可愛いんだからさ?ね、一織くん?」
一「なっ・・・どうしてそこで私に振るんですかね」
突然話を振られた一織さんは分かりやすくため息を吐きながらも、万理に手伝い始める。
こうして着々と大掛かりな準備が進むのを、私はただただ見ているだけしか出来なかった。