第18章 Return to Myself
七瀬さんや逢坂さんは恥ずかしがりながらも、それが仕事ならとにこやかに着てくれそうではあるけど。
問題は、一織さんかなぁ。
きっと、というか絶対こういうの好きなタイプではあるのは確信してるけど。
見るのと着るのでは、いくら可愛いものが好きだと言っても意味合いも変わってくる。
けど、恥ずかしがりながらも衣装を着た一織さんはちょっと見てみたい気もする。
きっとツンとして興味なんてまるでないと言うような素振りで、チラッと衣装を差し出す私を冷やかに見ながら言うんだろうなぁ。
一「べ、別に可愛いものは好きではありませんが、大先輩の提供する衣装であれば仕方ありませんね」
って言いながら着てくれたり?
ヤバい!
それメチャクチャ可愛いやつなのでは?!
一織さんにはいつも何かとお小言を言われてしまうばかりだけど、実は可愛いものを目にしている時は一織さん自身も、そこがキュンポイントだったりするんだよね。
本人に言ったらしばらく口聞いて貰えないかもだけど。
だったらいっそ三月さんにもお願いして和泉兄弟揃ってステージでアレを着て貰うなんてのは・・・
ち、違う違う!
そもそも芸能活動がどうなるかだってまだ分からないのに、まだ今はそんな事を考えてる場合じゃない。
この衣装案はあとで千とよーく話し合うとしても、今はとにかく百ちゃんが考えてくれたフリを頭と体に叩き込まなければ。
『百ちゃん。最初の何回かは隣りで一緒に動いてくれる?なるべく早く覚えるようにするから、それまではお願いしてもいい?あー、あとついでにユキも』
千「僕はついでかい」
あのねぇ?と零す千にべーっと舌を見せてから、バサリと羽織っていた上着を脱ぎ捨てる。
『さ、練習お願いします』
邪魔にならないように髪をキュッと束ね、パソコンから流れ出す音に負けないようにステップの1歩を踏み出した。