第18章 Return to Myself
❁❁❁ 陸side ❁❁❁
朝、愛聖さんが仕事に出掛けていくのを見送って。
それからオレたちはこれからどうすべきかをずっと話し合って。
結果、社長にどんな事を言われても、どんな条件を出されても、それでも顔を上げて前を向いて歩こうとみんなで決めた。
大和さんが思い立ったら吉日だと言って、みんなで愛聖さんの同行から戻る社長を事務所で待って土下座でもなんでもしようと言ってオレたちもそれに頷き、いざ事務所へ行こうと寮の玄関を開けると。
そこには今ここにいないはずの社長が立っていて、いざ、と心を決めていたオレたちは揃って驚かずにはいられなかった。
小「今から僕に着いてきて欲しい」
たったそれだけ言って歩き出す社長の後に続いて、オレたちは何も話さずに、ただ、歩き出した。
・・・着いた場所はオレたちが何度もデビュー前に来ては路上ライヴをした公園で。
「この場所はあの頃と変わっていないんだな」
そう小さく呟いたオレを1度だけ見た社長は、それでも何も言わずに、あの頃のオレたちと同じように歌やダンスを披露する人たちに声を掛けては握手をして、自主制作のCDを買ってあげたり、励ましの言葉を掛けては穏やかに微笑んでいた。
そんな社長を暫く見ていると、不意に社長が振り返りオレたちの前へと立った。
小「陸くん。キミは彼らを見て、どう思ったかな?」
「デビューしたくて、みんなにアイドリッシュセブンを知って欲しくて頑張っていた時のオレたちみたいだなと思いました」
それは本当にそう思えた事で、思ったままに答える。
小「そうだね。ここにはまだ、夢に手が届かない頃のキミたちがたくさんいる。彼らが精一杯の手を伸ばして憧れている光り輝く舞台に、キミたちは立っているんだよ。それがどんなに素晴らしくてありがたい事なのか、絶対に忘れちゃダメなんだ」
社長が話すことは確かに大きく頷けることで、ここにいるメンバー全員が社長に向けて顔を上げる。
小「どんなに苦しくても、どんなに辛いことがあっても努力していた昔のキミたちの事や、そんなキミたちが憧れていた夢を・・・もっと大切にしてあげなさい」