第18章 Return to Myself
『岡崎さん、お昼ご飯は済まされました?』
一般的なお昼の時間はとうに過ぎているけど、この業界にいるとそんな一般的な時間なんてあまり意味がない事を分かっているから、もしかして?と考え聞いて見れば、案の定、予想通りの答えが返って来る。
岡「実は朝から忙しくてお昼らしいお昼はまだなんです。合間には・・・ほらコレ!10秒でチャージ出来るとかいうゼリーなら飲みましたが」
ポケットから既に空になっているパックを出して岡崎さんが私に見せては、一応これなら栄養素は入ってますからと笑う。
『ダメですよ岡崎さん。Re:valeのマネージャーだなんて、それこそ体がいくつあっても足りないくらい忙しいのに』
そう言いながらも、そのセリフは少し前なら私が三月さんや一織さんに言われていたのと同じだなと思い返しては、私も笑ってしまう。
『ね、岡崎さん。実は私、今日は取っても素敵なお弁当があるんです。良かったらご一緒しませんか?』
岡「あ、でも佐伯さんの分が」
『大丈夫です。三月さんにたくさん作って貰ったんで一緒に食べましょう?』
ね?とその包みを見せると、岡崎さんは折角お誘い頂いたのでと指先で頬を掻いた。
岡「そうだ!今日は天気もいいし、この局は屋上庭園があるので行ってみませんか?」
『屋上庭園・・・』
岡崎さんの提案に、少しばかり不安が過ぎる。
だって屋上って、テレビ局の屋上って!
それはもう、千の部屋よりもきっと遥かに高層な屋上、だし・・・いや、でもテレビ局の屋上庭園なんだから安全対策は絶対に頑丈な物になってるはず!
よし!大丈夫!とひとり頷いて、それこそ岡崎さんのお誘いに是非行きましょう!と手荷物を纏めた。
岡「Re:valeはまだ暫く収録がありますから、時間は気にしなくて大丈夫です。千くんにも佐伯さんの護衛を任されているので、僕がしっかりとお守りしますから」
笑いながらドンと来いです!と胸を叩く岡崎さんに釣られて笑い、私も岡崎さんと一緒なら心配する事はないですからと言って、当たり前のように私の手荷物を持ってくれる姿に恐縮しながらも楽屋を後にした。