第18章 Return to Myself
「行こう、部屋まで送るよ」
三月さんに言われて僕は愛聖さんの手を取って一緒に立ち上がり三月さんを振り返る。
三「おぅ、愛聖もさっさと着替えて朝飯食え?それに昨日ラーメン屋で、今日は忙しい日って言ってなかったか?」
『あ、はい・・・』
僕たちの現状を思ってか、愛聖さんは少しだけ俯いたまま三月さんにそう返した。
「そう言えば、タイミング合わなかったらゆっくり座って食事する時間も怪しいとか言って、環くんを驚かせてたけど・・・」
三「それを聞いたからちゃんと対策はしたぜ?夜のうちにサラダチキン作っといたし、さっきキャロットラペも作った。タマゴも茹でたし、どっちも他に野菜足して色々サンドイッチにしてあるから、好きなの詰め込んで持ってけよ」
『いいんですか?!』
それまで複雑そうな表情をしていた愛聖さんが、急に元気になって顔を上げる。
三「当たり前だろ、愛聖の為に用意したんだから。だからほら、早く着替えて戻って来ねぇと腹空かした環に全部食われちまうぞ?」
『お腹空かせた四葉さん・・・それは大変!今すぐ着替えて来ます!』
ついさっきまでの様子とは違い、元気よく駆け出す愛聖さんを見て、僕も三月さんも、それから大和さんまでが顔を見合わせて笑った。
大「色気より食い気のほうが断然トップだな」
三「その色気のないやつを朝っぱらから襲ってたのは誰だって話だけどな」
大「お子様襲うほどお兄さん困ってないっての。あれはチョーットからかっただけだ」
からかっただけであれほどの悲鳴をあげられる物なんだろうか?と思いつつも、嬉々としていた愛聖さんの姿を思い出す。
「三月さんがいつもより早く食事の支度を進めていたのは、朝食だけじゃなくて愛聖さんのお弁当の準備もあったからなんだね」
僕が起きた時には既にある程度の食事の準備は進んでいて、それ以外にもいくつか支度していたから何だろうと思ってたけど。
三「まぁ、な。こないだのオレなりの詫びっていうか。あ、いや、そういうのでもないんだけどな。愛聖に嫌な役回りさせちまったと思うし、オレが作るメシ位で元気になってくれるんだったら、いくらでもとか思ってよ」