第17章 見えない未来
環「ホント・・・ごめん・・・」
私の肩口に頭を乗せた四葉さんが、微かな声でゴメンと呟いた。
そんな四葉さんの背中に私も手を伸ばして、大丈夫だよと何度もさすった。
『私も、叩いたりしてごめんなさい。いくら感情的になっていたとしても、いけない事なのに』
今までも四葉さんとは何かと衝突する事があった。
きっとそれは、これからも幾度となくあると思う。
だけど口下手な四葉さんだからこそ、言葉を飾り立てることもなく真っ直ぐな気持ちをぶつけてくれるんだろうから。
その時はまたお互いちゃんと向き合って話せば、こんな風に分かり合えると思うから。
背中を屈めたままの四葉さんからゆっくり体を離し顔を上げると、視界の端に龍が見えた。
『龍・・・』
龍「ちゃんと仲直り出来たみたいだね」
私と四葉さんを交互に見て龍が笑顔を向けながら、はいどうぞ?と私たちに飲み物を渡してくれる。
龍「ケンカするのは良くない事だけど、そうする事で分かり合える事もある。楽や天だって前はよく揉めてた。だけど大事なのは、お互いの気持ちをちゃんと理解して受け入れる事だよ」
楽や天も・・・確かに龍が言うように前は衝突しては龍が間に入ってを繰り返した。
だからこそ龍の言葉は、底をつきそうだった心に新しい水を注いでくれた。
龍「でも愛聖が環くんを叩いたって聞いた時は、驚いて言葉に詰まっちゃったよ」
いたずらっ子のように笑いながら龍が言う。
『だ、だからそれは!・・・今度からは感情的にならないように気をつける』
龍「どんな理由でも、一方的に感情的になるのはダメだ。けど、必要な時はちゃんと気持ちをぶつけるのもありだよ。相手を大事な人だと思うなら、尚更ね」
どうしてそうなってしまったかを詳しく話せる訳もなく反省だけを見せる私に、龍は龍らしい穏やかな口調で私を諭した。
こういう時の龍って、ちょっとだけ万理みたい。
・・・なんて思ってしまった事は、龍にも万理にも内緒にしとこう。
『あ、龍・・・これのお金、今度でもいい?』
手渡された飲み物を見せて、実はお財布を忘れちゃって・・・と苦笑すると、龍は笑い出した。
龍「相変わらず律儀だな、愛聖は。これくらい気にしなくていいって。泣きながら走って来たなら喉もカラカラだろ?」
『ちょっ、別に泣きながら走ってなんか!』